文=鈴木文彦 写真=篠原宏明

2月14日(月)、東京・恵比寿に『wine@ EBISU』(ワインアット エビス)というワインショップ兼ワインバーがオープンする。一見すれば、世にあまたある、ワインのお店。しかし、ここは、これまでのワインとの付き合い方をアップデートしてくれる可能性を秘めている。wine@という企ての一部をなすWebサイト https://wine-at.jp/)とともに、仕掛け人である代表取締役社長 丸岡栄之氏、および取締役 橋本拓也氏のインタビューを紹介したい(全2回)。

ワイン業界の危機を救う?異業種が手がけるワインショップ誕生(前編)

プラットフォームとはなにか?

「飲食店をやっていて成功するためには、座席の限界などから、ビジネスとして商品を高く売るということを追求するモデルにならざるを得ない。そこでは、常にユーザーの利益と自社のビジネスの綱引きという現実に直面します。

 しかし、ワインのプラットフォームビジネスは、システムを構築して、効率化・最適化することによって商品をより安く売ることを追求するビジネスになります。飲食店にとっては、手間や無駄なコストを排除し、新しい顧客を獲得する機会になり、ユーザーはより安く、自分の好みに合ったワインをお店で飲む機会を得られることになります」

 と丸岡さんが言うと、再び橋本さん。

「たとえば、デジタルにもまだまだ可能性がありますよね。ワインショップなどはリアル店舗が主で、追加サービス的にネット通販もやっています、という場合がまだかなり多いようにおもいます。しかし、現在は、オンラインでもオフラインでも、シームレスな顧客体験を提供し、高い満足度を実現するのが一般化しつつあります。私たちは、ワインでそういうものをつくろうとしています」

 自分たちがインポーターになろう、というつもりはないんですか? とたずねてみると、ふたりは口を揃えて、いまのワイン業界と競合するのではなく、ワイン関係者にとって価値あるプラットフォームになって、全体の利益になりたいと言う。

「wine@がBYOを頑張っているのもそのためです」

 BYOというのはBring You Own(bottle)の略語で、飲食店にお客がワインを持ち込むことを指す。お店はボトル一本につき、1000円から3000円程度のコーケージ(抜栓料)を要求することで、グラスやサーブなどのサービスを提供する。オーストラリア発祥で、カリフォルニアとかブルゴーニュのようなワイン産地でも比較的一般化しているものだけれど、日本だとあまり注目されていない。実はwine@はもともと、飲食店にこのBYO対応を促し、それを紹介するサービスで世にその名が出た。

「1本2000円の抜栓料でBYO対応してもらうとすると、お店はお客さんが持ってくるのが、1万円のワインでも、3000円のワインでも、一律、2000円しか儲からないですよね。ワインを得意としているお店にとっては、それはあまり魅力的ではないかもしれません。しかし、ワインの取り扱いがない、あるいは少ないお店であれば、ワインリストをつくる手間、在庫リスクや保管コストはwine@に任せた形で、ワインを充実させられます」

 このサービスに、すでに東京都内で1000店舗が加盟しているのは、これが納得できる仕掛けだからだ。