逃げ遅れの主要因は、避難判断に必要な情報伝達の不足と避難先の環境への不安
近年、台風の巨大化や短時間豪雨などによる気象災害の激甚化が進行している。豪雨時の人的被害を軽減するためには、気象災害に関する予兆情報を把握し、分析・評価した上で、的確に伝達することによって、迅速で適切な避難行動を促す必要がある。
オンライン化の進展により、スマホなどによりハザードマップが参照できるようになっているが、市民の認知度は低く、専門的で難解な情報も多いため、自宅や滞在場所にどのように影響するのか分からないなど、内容理解が進んでいない。
2019年10月の台風19号では、首都圏を中心に浸水被害をもたらした。その際、浸水想定区域の低層階に居住する人など、本来は避難すべきだった人の7割強が、警戒レベル4の発令を知りながら、避難しなかった※1。理由として、「自宅にとどまった方が安全だと判断した」人が9割強、「浸水する地域だと考えていなかった」人が5割強であった※1ことから、自宅の浸水リスクについて理解が進んでいなかったことが分かる。
避難先の環境に対する不安もその理由の一つである※1。浸水等の被害エリアは局所的であるため、域外への広域避難や親戚・知人宅、ホテル等の多様な選択肢を用意しておくことが有効と考えられる。しかし、自治体からの情報伝達や支援の遅れ、通勤・通学等の生活環境などの不安から遠隔地への避難を躊躇する場合も考えられる。
フェーズフリー:身の回りにあるモノやサービスを、平時はもちろん、災害発生等の非常時にも役立てることができるという考え方。