スパークリング酒が生まれるまで
七賢の味わいは、舌を包み込むような、若干の甘みを感じる軟水の酒。グラスに注ぐととろっとした質感で淵を垂れる。それが「白州の水を体現するお酒」だ。
山梨銘醸は2015年から2021年までに、9種類のスパークリング酒を造ってきた。米と麹は一緒だけれど、酵母を変えたり、貴醸酒にしたりと試行錯誤して、製法を全て変えている。
アラン・デュカススパークリング酒を造っていく際は、シェフ・ソムリエのジェラール・マルジョン氏からこういうイメージで造って欲しいという20個くらいのキーワードをもらったそうだ。しかしそのキーワードを咀嚼し、お酒にそのキーワードを入れ込んでいくのは非常に緊張感があり、難しい作業だった。何故なら、そのキーワードには「日本らしく」「世界が納得する酒」というようなものがあったからだ。
北原さんは、独自の製法を編み出していった。
「日本らしさ」は桜の樽で表現。「世界が納得する」は、彼らのお店に来る人たちが納得するものとした。それは、驚きの第一印象だけで終わらず、頷く印象・感覚があるということだと噛み砕き、それを酒質へ展開した。桜樽・貴醸酒の造り方・果実味のある酵母という3つの特徴をブレンドし、アラン・デュカススパークリング酒が生み出された。
北原さんを突き動かすもの
素晴らしいお酒を造るための秘訣はズバリ「人のコンディション」だと北原さんは話す。酒造りは一人ではできない。現在山梨銘醸は8人で酒造りをしている。少人数だが、常に誰かしら休む日を作っている。昔は休むことができなかったけれど、北原さんが労務環境を変えていった。1つの作業を2人以上ができるようにしたり、コミュニケーションを密に取ることを意識したり。酒造りは、自発的に行動できる仕組みや雰囲気が大切なのだ。「雰囲気が良くなると酒が良くなる」という。
日本はシャンパンの輸入国として世界第3位。泡好きの国だ。北原さんがスパークリング日本酒を造っているのはそこに潜在的なマーケットがあると見ているから。
七賢のターゲットは日本酒業界だけではない。国内で60%以上のシェアを持つ、シャンパン・スパークリングワイン・ビールやハイボールを含むスパークリング業界がターゲットなのだ。ブランディングを強固なものにするために、IWC、Kuramaster、全国新酒鑑評会、Sakecompetition、の4つのコンペティションに絞ってエントリーしている。
北原さんは、酒造りは自分自身だと教えてくれた。
幼い頃からサッカーが好きで、そのスポーツの経験が今に生きているという。サッカーは勝ち負けを競うスポーツ。勝つために戦略と戦術を持ち寄って、最短距離で“勝つ”ためにどうするかを考える。そのサッカーで培った考えは、自身の人間形成や、普段の生活を作っている。
酒造りにおいても、ゴールに最短距離で行くためには、どのようなお酒を造り、展開して行くのか。北原さんの頭にはロードマップがある。そして、心がけているのは「いつも変わらない意識でいること」だそうだ。上に立つ者として、自身のモノサシやビジョンを社員やスタッフにきちんと伝えることで、チームで一体となって進んでいけるのだ。
日本酒は「生まれ育ってきた結晶」
北原さんにとって日本酒はどういう存在なのか、とたずねると、「白州の地に生まれ育ってきた結晶」だと教えてくれた。北原さんご自身が、酒造りをスタートされたときから、今に至るまで、その努力や挑戦、その中にある苦悩やストーリーが歴史となり、たくさんの小さい気泡となってスパークリング酒に染み込んでいるようだ。
「2030年、スパークリング日本酒として知名度をNo1にしたい」というゴールに向かって猛スピードで進んでいく、七賢のこれからが楽しみでならない。きっと、2030年、皆があっと驚くことを仕出かしてくれるに違いない。
Alain Ducasse Sparkling Sakeに合わせたい「桃の冷製カッペリーニ」
さくらんぼのような風味に同じ系統の桃を持ってくることで風味の方向性を統一し、夏に食べたい冷製カッペリーニに仕上げた。
<材料>2人分
・パスタ:200g
・桃:1個
・ミニトマト
・生ハム:4枚
・バジルの葉:適量
・パルメザンチーズ
調味料A
・オリーブオイル:大さじ2
・レモン汁:大さじ1
・にんにくすりおろし:小さじ1
・造り酒屋の塩麹(山梨銘醸):小さじ2
・こしょう:ひとつまみ
<作り方>
(1)桃は凹みに沿って、包丁を入れ、皮を向いて、一口大にカットする。
(2)ボウルにAの調味料を入れ、1とよく混ぜ合わせる。パスタを茹でている間、冷蔵庫へ。
(3)パスタが茹で上がったらしっかり冷水で洗い、水を切る。
器に3を盛り、2をかけてバジルの葉とミニトマト、生ハム、パルメザンチーズを飾れば出来上がり。