愛を感じるクライマックスの死闘
そしてクライマックス。上林と日岡が直接対決を迎える。小康状態にあった呉原の街に、上林は自らの組を構え、復讐のために尾谷組に突撃する。その狼煙を上げるべく、尾谷組にダンプカーが突っ込む画に圧倒される。この時を待っていた! 上林組の若い衆の雄たけびが嬉々と夜の街に響く。
そして郊外での死闘。そこに至るまでも、上林と日岡のカーアクションがあったりと、なんとも贅沢な見せ場が用意される。このクライマックスの二人の死闘シーンの撮影には、実に3日間を要したという。白石監督は「上林と日岡のランデブーだと思って撮っていた」と振り返る。「まさに愛しか感じない」とも。
暗闇の中で延々と殴り合う二人の死闘はまさにブロマンスの真骨頂! 萌えた。普通、殴り合いのシーンが続くと単調になるのだが、この場面では二人がこの死闘を楽しんでいるようにも見え、妙な色っぽさを感じた。監督の言う「愛」が昇華しているからなのだろう。
いずれ勝負がつくことは百も承知だったが、最高の見せどころで終わって欲しいと思った。恐らく観客が望むであろうラストは、清々しさすらある。まさに、映画史に残るバトルだったのではと思う。
もちろん、見せ場は随所にちりばめられている。映像一つにしても、ネオンが妖しく光る夜の街、雨に濡れたアスファルトなどが艶っぽく印象深い。
3年前の抗争への関与を中村獅童演じるいけ好かない新聞記者・高坂にスクープされ窮地に陥る日岡など、今回の日岡は「負け戦」だと、松坂は当初から監督に言われていたのだそう。そう考えると、弱みを握られ日岡を警察組織から排除したいと考える、滝藤賢一演じる、捜査一課管理官の嵯峨大輔がどう反撃に出るかも気になるところだ。
その負けっぷりをどう演じきるかが、本作における松坂桃李の一つの新たな挑戦だった。時折無防備に見せる日岡の笑顔は、上林の笑顔とは対照的でもある。
その昔、実写版『ガッチャマン』(13)で初共演した二人が8年後、こんな素晴らしい再会をするとは夢にも思わなかった。熱い男たちの夏は、まさにこれから開幕する。