文=岡崎優子
松坂桃李渾身の孤狼ぶり
2018年度の日本アカデミー賞で最多12部門の優秀賞、4部門の最優秀賞に輝いた『孤狼の血』。主演を務めた役所広司はアジア映画界のアカデミー賞ともいわれるアジア・フィルム・アワードで最優秀主演男優賞を受賞、助演の松坂桃李もキネマ旬報助演男優賞を受賞するなど、『孤狼の血』はこの年の映画賞を席巻、総なめにした。
コンプライアンスを度外視した強烈なバイオレンス、ひりひりする男たちの生き様は衝撃的で、ヤクザ映画はまだまだこの時代でも十分いけるんだと心強く思った。いや、そんなジャンルの枠を軽く超えた、エンタテインメント作品としての輝きを十二分にはなっている。
それから3年。待ちに待った続編『孤狼の血 LEVEL2』が今夏公開される。監督は前作と同じく、白石和彌。当初、続編は柚月裕子の小説『孤狼の血』シリーズ三部作の第2作『狂犬の眼』を原作とするとアナウンスされていた。ところが原作から離れ、シリーズ三部作とは異なる完全オリジナル・ストーリーに。映画独自の世界観が生み出された。
舞台は前作から3年後の呉原市。役所広司が演じた伝説の刑事・大上章吾亡き後、その遺志を引き継いだ松坂桃李演じる日岡秀一のその後が描かれる。
まず、この3年でいったい何があったの? と思うほどの日岡の変化に驚かされる。髪を短く刈り上げ、身体もひと回り細く絞られた日岡は、飢えた“孤狼”そのものと化していた。ぎょろりとした目は鋭さをさらに増し、今にも噛みつきそうな雰囲気を醸し出している。
下手に絡んではいけない。大上とはまた違うマル暴刑事としての存在感を放つ。今まで松坂が演じてきたどのキャラクターとも一線を画した、その異様なルックスに、度肝を抜かれた。