文=岡崎優子

© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

世界興行の大ヒットを経て、ついに日本公開

 当初、2020年11月に公開が予定されていた『ゴジラvsコング』だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期。ようやく公開の目途がたち、まずは香港で3月24日、中国で26日に公開、3日間7030万ドル(約77億7184万円)の大ヒット・スタートを記録した。ほか38カ国でも公開。コロナ禍では最高となる、1億2200万ドル(約135億円)の海外スタートを切った。

 当然、北米での期待値は高まり、『TENET/テネット』を上回る3000カ所以上で上映が決定。その一方で、同日、HBO Max加入者には無料配信される異例の公開となった。

 結果的には、週末3日間で約3200万ドル(約35億3768万円)を記録。配信の影響でその後は伸び悩んではいたが、6月23日には1億ドル(約110億円)を突破、全世界では4億4250万ドル(約489億1948万円)超えの大ヒットとなった。

 そしていよいよ、ゴジラを生み出した日本でも7月2日に公開された。もはや世界興収5億ドルも射程内に入ったと言えるだろう。

 

時代を超えた、夢のマッチメイクが実現

 本作『ゴジラvsコング』はハリウッド版「ゴジラ」シリーズの『GODZILLA ゴジラ』(14)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)と、『キングコング:髑髏島の巨神』(17)をクロスオーバーして描かれた「モンスターバース」シリーズ第4作。日本だけでなく、世界に熱狂的ファンを擁する破壊神ゴジラと、映画史に燦然と輝く守護神キングコングが再び対決するとあり、この企画が発表された時からテンションは上がった。

 思えば約60年前の1962年、「ゴジラ」シリーズ第3作『キングコング対ゴジラ』が日本で製作され、この夢のマッチメイクが実現。東宝創立30周年の記念作品、しかもゴジラシリーズ初のカラー、シネスコ作品とあって、配収3億5010万円、その年の日本映画の興行ベスト・テン第4位にランクインしている。

 『キングコング対ゴジラ』では、南の島で捕獲したキングコングを日本まで海上輸送する途中、脱走したゴジラと休眠から目覚めたゴジラが遭遇し対決する。本作『ゴジラvsコング』でもキングコングは海上輸送され、その途中でゴジラを出迎える。

 アダム・ウィンガード監督も名言しているが、コングを南極に空中輸送するシーンには62年版にオマージュを捧げられ、コングが気球からヘリコプターに変わってはいるが、むき出しのまま運ばれる。

 『キングコング対ゴジラ』で美術を担当していた故・井上泰幸デザイナーは生前、「円谷英二特撮監督の創作の原点でもあるキングコングを日本映画に出演させるということで、現場の熱気も相当なものがあった」と当時を振り返っていらした。今回はハリウッド側が逆に、そんな心配りをしてくれたのかと思うと、ぐっとくる。

 もちろん、62年版はCGではなく、すべてセットと着ぐるみ。撮影用のメインセットのほか、精巧なミニチュアセットがいくつも作られた。当時の特撮を支えた職人の仕事ぶりは日本の誇りだ。ゴジラも硬いゴムからウレタンを使うようになり、口を電動で開閉するためのラジコンが開発されたのもこの作品からだった。

 

ファンの心を鷲掴む、孤高に闘う気高さ

今回のゴジラは真正面から捉えられたカットが多い。怒りを爆発させた、荒々しい動きにも注目!
© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 そんな試行錯誤をしながら作られた62年版は、海外でも相当の人気ぶりだったという。対して新作『ゴジラvsコング』のバトルはCGで再現、大迫力で魅せてくれる。この初対決が見られるまで正味40分近くが経過。じりじりと今か今かとゴジラの登場を待った。

 確か、前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でもゴジラが登場し、暴れまくるキングキドラと対決するまで40分近くかかった。以後、人間ドラマは二の次で、怪獣中心に物語が進行する。さらには人気怪獣モスラ、ラドンまで登場し、繰り広げられた迫力のバトルは圧巻だった。その死闘の末、〈怪獣王〉としてゴジラが覚醒する。

 今回はキングコングとの対決。炎も放射能も吹けないコングが素手でどう闘うのか。そのあたりも本作の見せ場となっている。個人的には、よりプロレス的な彼らの闘いが好みだったりもするが、コングは新たな力を手に入れ、第二ラウンドに参戦する。

 なぜ彼らは闘わなければならなかったのか。そこにゴジラの、地上に君臨する怪獣王が故の大きな理由がある。言葉のない彼らに感情移入できるのは、その使命感から孤高に闘う気高さがあるからだ。

 

コング映画の美女と野獣的アプローチ

 ついゴジラびいきになりがちだが、1933年に『キング・コング』が登場して以来、コングの活躍ぶりも今や伝説になっている。ニューヨークを代表する摩天楼、エンパイア・ステート・ビルの頂上によじ登るコングの姿は、オリジナル版を観たことのない若い世代でも知っている。

コングも感情を持ち、観客が感情移入できるキャラクターとして動きやアクションがつけられている
© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 またコングが人間の女性に恋をし、交流を深める〝美女と野獣〟的アプローチもツボ。2005年のピーター・ジャクソン監督版『キング・コング』はあまりにもその切なさに号泣した。

 余談だが、1986年のジョン・ギラーミン監督版『キングコング2』では、日本での宣伝活動の一環で特番が組まれ、「ミスター&ミス キングコング」を選出する大会で恥ずかしながら優勝、ミス・キングコング(!)になったのも今では良き思い出だ。猿好きということもあるが、コングへの思い入れもゴジラ同様に強い。

 今回のコングは大人の女性ではなく、口のきけない少女との友情が描かれる。手話を通して少女と会話。コングの知性がさらに進化していることにも驚かされる。いつの時代も、コングは女性に優しい眼差しを向ける。
 

コングと心を通わせる少女の存在が、コング映画ならではのエッセンスとして効いてくる
© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

人間はあくまでも脇役の潔さ

 一方、ゴジラにはそういった温かい人類との交流は皆無。ハリウッドと日本のキャラクター描写の違いなのだろうか。ゴジラはあくまでも神にも匹敵する、絶対的存在(例外的に67年『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』といった作品もあるが……)。だからこそ、時には人類の敵として、時にはヒーローとして描かれる。多くの学者たちがゴジラの真意を探ろうとするが、それは長い歴史においても謎に包まれている。

 特にハリウッド版ゴジラシリーズでは、地球という生命体を守る守護神的存在として描かれる色合いが濃い。その前には人類も怪獣も関係ない。街中であろうと関係なく、暴れまわる。

 人間ドラマはあくまでもサイドストーリーであり、ゴジラを前にはハリウッド・スターであろうが、すべて脇役というのも潔い。そんな中、小栗旬がハリウッド版ゴジラシリーズ前2作に出演していた渡辺謙に代わって出演している。設定は、渡辺が演じた芹沢猪四郎博士の息子、芹沢蓮。今や頼もしい兄貴的存在として若手俳優に慕われる小栗が、ハリウッドでどんな爪痕を残してくれるか。ファンにとっては期待も大きいだろう。

小栗旬が物語のカギを握る人物として参戦。渡辺謙同様、日本語的に「ゴジラ」と発音しているのも二人の結び付きを感じる © 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 時代を超えた二大モンスターの究極対決、その裏で蠢く人間のさまざまな思惑。コングをはじめ、怪獣たちはどこから来たのか。『ゴジラvsコング』には非日常に埋没できるエッセンスがちりばめられている。

 北米では『ゴジラvsコング』を映画館で観た観客のうち、4分の1以上がIMAXや大型スクリーンを選択しているとのデータがある。モンスター映画のスペクタクルを体験するため、3~5ドル多めに課金。これは通常よりもはるかに高い値だ。

 コロナ禍で映画館に思うように足を運べず、配信で映画を鑑賞してきた反動なのだろうか。少なくとも、本作は大型スクリーンで楽しめる、映画ならではの魅力が満載。夏の映画興行を盛り上げる起爆剤としても大いに期待したいところだ。

『ゴジラvsコング』 全国東宝系にて公開中(配給:東宝)
地球最大の究極対決!  最強はどっちだ!
© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.