今回のコングは大人の女性ではなく、口のきけない少女との友情が描かれる。手話を通して少女と会話。コングの知性がさらに進化していることにも驚かされる。いつの時代も、コングは女性に優しい眼差しを向ける。
 

コングと心を通わせる少女の存在が、コング映画ならではのエッセンスとして効いてくる
© 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

人間はあくまでも脇役の潔さ

 一方、ゴジラにはそういった温かい人類との交流は皆無。ハリウッドと日本のキャラクター描写の違いなのだろうか。ゴジラはあくまでも神にも匹敵する、絶対的存在(例外的に67年『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』といった作品もあるが……)。だからこそ、時には人類の敵として、時にはヒーローとして描かれる。多くの学者たちがゴジラの真意を探ろうとするが、それは長い歴史においても謎に包まれている。

 特にハリウッド版ゴジラシリーズでは、地球という生命体を守る守護神的存在として描かれる色合いが濃い。その前には人類も怪獣も関係ない。街中であろうと関係なく、暴れまわる。

 人間ドラマはあくまでもサイドストーリーであり、ゴジラを前にはハリウッド・スターであろうが、すべて脇役というのも潔い。そんな中、小栗旬がハリウッド版ゴジラシリーズ前2作に出演していた渡辺謙に代わって出演している。設定は、渡辺が演じた芹沢猪四郎博士の息子、芹沢蓮。今や頼もしい兄貴的存在として若手俳優に慕われる小栗が、ハリウッドでどんな爪痕を残してくれるか。ファンにとっては期待も大きいだろう。

小栗旬が物語のカギを握る人物として参戦。渡辺謙同様、日本語的に「ゴジラ」と発音しているのも二人の結び付きを感じる © 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 時代を超えた二大モンスターの究極対決、その裏で蠢く人間のさまざまな思惑。コングをはじめ、怪獣たちはどこから来たのか。『ゴジラvsコング』には非日常に埋没できるエッセンスがちりばめられている。

 北米では『ゴジラvsコング』を映画館で観た観客のうち、4分の1以上がIMAXや大型スクリーンを選択しているとのデータがある。モンスター映画のスペクタクルを体験するため、3~5ドル多めに課金。これは通常よりもはるかに高い値だ。

 コロナ禍で映画館に思うように足を運べず、配信で映画を鑑賞してきた反動なのだろうか。少なくとも、本作は大型スクリーンで楽しめる、映画ならではの魅力が満載。夏の映画興行を盛り上げる起爆剤としても大いに期待したいところだ。

『ゴジラvsコング』 全国東宝系にて公開中(配給:東宝)
地球最大の究極対決!  最強はどっちだ!
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