今すべきは「基本」に立ち返り、「バランス」を理解すること

 無論、「空気を読む」ことや「行間を読む」ことなどを否定する気はない。むしろ、これらはその環境においてベストなやり方であったのだと思う。

 しかし、働く環境やコミュニケーションの手段、働き方自体の価値観が変わった今、真剣に考えねばならないのはバランスにあると考える。
先に指摘した「プロジェクトが失敗する4つの状態」を防ぐためには次のことが必要となる。
①明確な目的や目標をベースに妥当性のある計画を立て、それを「明文化」し、各関係者に伝わるまで説明する。
②現状が「可視化された状態」、「判断できる基準」をつくり、特定の個人が持つ情報に依存せず意思決定者が常に判断できる状態にする。
③体制と権限、責任を明文化し、誰がどの問題解決の責任を負うのかを「明確」にする。
④「リスク」を洗い出し、事前に対策を打つ。得た教訓はしっかりと記録し「組織として」後進に伝え続ける。

 まずは基本に立ち返り、上記のような手法としてのPMを行うことが重要なわけだが、これらを真正面から行おうとすると組織の壁や現場の反発にあうこともままある。

 そうした場合、調整役となる組織や人が必要となるが、PMにおいては、PMO(Project Management Office)という役割がそれにあたる。こうした役割を据えた上で、旧来のコミュニケーション手法にテレワークで有効なテクノロジーをバランスよく加えることで、より円滑な業務遂行を可能にしていくわけだ。

 例えば、「テキストチャットでの雑談を積極的に推奨しメンバー間の信頼関係を築く」「PMOが第三者的に各メンバーとビデオ会議などを行い、業務を進めるにあたってのリスクや不足している情報、直接マネジャーへ言いづらいことなどがないかを聞き出し、PMOが代わりにマネジャーへ進言する」などだ。

 それでもオンラインではまだまだ難しい場面も存在する。例えば、ある議題に対して会議では結論が出たが、一部のメンバーは納得していないような場面だ。

 こうした場合、物理的に同じ空間にいれば、メンバーの顔色を察し会議後のちょっとした時間を使ってすぐに話し掛け、その人の本音を聞き出したり、補完的な説明などできた。しかし、オンラインでは、これらをタイムリーかつ自然に行うことはまだまだ難しいであろう。このような場面を補完するには、やはり物理的に人が集まる仕組みを作る必要がある。

 コロナ禍において、コミュニケーションをきっかけとした今回の問題は、むしろ変革のチャンスであると言える。暗黙や行間を読むことで進められてきた業務やマネジメントの偏り、在り方をもう一度見直してもらいたい。

 これには実行力のある人材が必要になる。自社内でまかなえなければ、外部の人材を登用しても良いので、テクノロジーを駆使しテレワークのメリットを生かしつつ、リアルのコミュニケーションを場面に合わせて取り入れ、バランスをとってもらいたい。

 そのような変革活動が今後、ますます企業に求められていくことは間違いない。