テクノロジーの進展で働き方と経営はどう変わるか?

オンライン化がもたらした自由度の高い働き方が投げかける課題

JBpress/2020.10.15

いいね ツイートする

東京大学大学院
経済学研究科 教授
柳川範之氏

本コンテンツは、2020年9月11日に全編オンラインで開催されたJBpress主催「Workstyle Innovation Forum 2020 <秋> 生産性を高め、イノベーションを創発する!“経営戦略”としてのワークスタイル変革」での講演内容を採録したものです。

オンライン化がもたらした自由度の高い働き方

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は非常に大きなものでした。今なお収束には至っていませんが最初の大きな波を越えた今、企業や社会の状況はどうなっているでしょうか? 

 テレワークやオンライン授業が急速に普及して、「対面でなくてもできること」が想像よりも多かったことを実感。結果として壮大な社会実験を行ったような感覚が私たちの気持ちの中にはあります。

 そしてこの社会実験のようなものを通じて、課題も見えてきました。しかもその多くは「すでにあった課題」だったのだと思い知らされています。デジタル化の遅れ、働き方改革の不十分さ、AIなどを活用した組織改革の欠落などです。

 例えば、在宅勤務の拡大によって、私たちは従来の組織にある数々の問題点に気付きました。今後も在宅勤務の占める割合が多くなる中で、この新しい働き方に適した組織にしていかなければいけません。

 とりわけ、仕事の役割分担を再定義していくことが不可欠となります。そして、このような見地からも期待が高まっているのがDXなのですが、「デジタルの活用」というのはあくまでも方法論であり、手段にすぎません。目指すべきゴールは、組織や企業カルチャーを変革することにあるのです。

 ただし、ここまでのお話ならば皆さんも方々でよく耳にしているはずです。今日、私はこの先のお話をしたいと思います。つまり「じゃあ、どうするのか」です。

 コロナショックによる在宅ワーク体験、つまりオンライン化した働き方の経験を通じて、多くの人が発見をしました。「時間と場所にとらわれない働き方は可能なのだ」と。「可能だ」という主張は、コロナ以前から叫ばれていました。

 私は5年も前から言い続けてきました。それでも現場の経営陣はなかなか動かなかった。「実感」が薄かったのです。しかし今回、否応なく実行をすることになり、ようやく「実感」は広く普及しました。

 オンライン化という手段によって、私たちは物理的距離が「消える」のだと気付きました。「地方に住んでいても東京の仕事ができる。ニューヨークの仕事もできる」のです。

 今までの私たちは「仕事のある場所へ出かけていく」という不自由さを受け入れるしかありませんでしたが、もうそんな必要はありません。

 移動に費やす時間からも解放されます。「会社」という物理的な場で連続性をもって働く必要もありません。自由に時間を細切れにして使うことも可能だと気付きました。

 場所と時間に縛られない働き方。この自由度にはとてつもないインパクトがあります。企業経営の視点で言えば、その自由度によって生まれる活力をいかに有効活用していけるかが問われているのです。