組織の中で、デジタル、データ戦略をリードするCDO(Chief Digital/Data Officer)を集めた世界で唯一の会員制コミュニティ、CDO Club Globalのパートナー組織として、CDO Club Israelがある。同団体は今年(2018年)11月、イスラエルの都市テルアビブで「CDO Club Israel Summit」を開催した。筆者が理事を務めるCDO Club Japanでは、同団体と連携し、CDOコミュニティを通じてイスラエルのスタートアップと日本のCDOをつなげるプラットフォームづくりを行っている。前回の記事(「デジタル分野でイスラエルがなぜ注目される?」)では、筆者が現地を訪れて目にした、イスラエルにおけるスタートアップの動向や日本企業の活動などをご紹介した。
今回、CDO Club Israelの創設者であり、同団体の代表を務めるAmit Kama氏が日本企業のCDOと交流するために来日した機会にインタビューを実施。イスラエルでスタートアップのエコシステムが醸成されている背景や日本企業への期待などについて話を聞いた。
イスラエルと日本のCDOコミュニティの相違点
世界中から約350社の大手企業が、イノベーティブなアイデアを求め、テクノロジーの開発や投資を目的としてイスラエルにデジタルラボを構えている。現在、政府が公式に発表しているだけでも約3500社、まだ大きな利益を生んでいない企業も入れると実に約2万5000社のスタートアップが存在するといわれているイスラエルだが、ここまで数を伸ばしたのは、ここ3年ほどであるとKama氏は語る。
「経営資源の限られたスタートアップ企業が次々と生まれている一方、企業のデジタル戦略をリードする人材に対するニーズはこれまで以上に高まっています。デジタルをリードする人々が集い、知見や経験、困難を共有して、解決に向けてディスカッションする環境をつくりたいという思いから、2015年9月にCDO Club Israelを設立しました」とKama氏は言う。
世界の傾向を見ても、CDOの数が急速に伸びたのは、IoTやディープラーニングといった新たなデジタルテクノロジーの認知が進んだ2014年であり、イスラエルでの状況と重なる。
「CDO Club Israelの設立後、最初に開催したサミットの出席者は数十人ほどでした。その時点でイスラエル国内にCDOは10名ほどしかいませんでした。しかし翌年には約25名に急増、現在では約70名のCDOが存在しています。デジタル化が進む社会で、CDOおよびデジタルトランスフォーメーションに対する企業の関心の高まりは明らかです」(Kama氏)
実に500名を超える参加者を得た今年11月の「CDO Club Israel Summit」には、CDOにとどまらず、CIOやCMOといった、デジタルトランスフォーメーションをリードするさまざまなキーパーソンが参加した。
「すでにビジネスの世界で広く認知されているCIOやCMOといったポジションだけではなく、新たにCDOという役割が求められるようになった背景には、組織全体を、部門を横断してリードする役割・機能が必要になったからです」とKama氏は分析する。