排尿のタイミングを通知する排泄予知ウェアラブル「DFree」
食べたら出す、それは生きていく上でごく当たり前のことだ。しかし、すべての人が満足な排泄ができているわけではない。たとえば、トイレに行くまでに準備が必要な車いす生活の人はもちろん、尿意や便意を感じにくいお年寄りなど排泄に悩みを抱えている人はゴマンといるのだ。
そんな中、先日、まずは介護施設を対象にサービスを開始した排泄予知ウェアラブル「DFree(ディーフリー)」をご存知だろうか? DFreeとは、便や尿が出るタイミングを予測してユーザーに知らせる、まったく新しいウェアラブルデバイスだ。
マッチ箱ほどの大きさで重さは70グラムと、とてもコンパクトなDFree本体。基本的な使用方法は、本体の超音波センサー部分を下腹部に装着し、バッテリーをズボンや上着にセットするだけ。すると、人体に影響のない超音波によって取得した体内の情報をBluetooth経由で専用のアプリに送り「何分後に排泄があるか」を分析する、という仕組みだ。
現在は、膀胱のふくらみ具合によって尿の量をパーセント表示して一定量に達したとき、ユーザー本人や介護担当者のスマホにバイブレーションなどで通知する排尿予測サービスを行っている。
「自分で尿意を感じてトイレで用を足せる人に『何分後』と余裕を持って知らせるだけでなく、尿意をうまく介助者に伝えられなかったり、トイレに行くまでに時間がかかったりする人にも使ってもらえる端末です」
そう語るのは、DFreeの研究・開発を含む事業を営むベンチャー企業トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社、代表取締役の中西敦士氏。
同社では、DFreeの実用化に向け、2年ほど各地の介護施設で実証実験を行っていた。さまざまな介護施設との交流を通じて、介護現場が抱える“排泄ケア”の問題を目の当たりにしたという。
「深夜でも10分に1回くらいの間隔で入所者からの呼び出しブザーが鳴っていました。そんなときに、1人の入所者が失禁してしまえば、体を拭いて服を着替えさせて、シーツ替えで、10〜20分間その人につきっきりになってしまいます。その間、ほかの入所者からも呼び出されて、とてもすべてに対応しきれない状態でした」
多岐にわたる介護業務のなかで、排泄介助やおむつ、尿パット替えなど、1日のうち3時間前後が排泄に関わる仕事だという。また、入所者に自力排泄を促すために、定時にトイレに連れていくトイレ誘導は、誘導しても排泄できない、いわゆる空振りをすることが多い。トイレ誘導の空振りが続くと、介護者はおむつ交換に切り替えて、入所者を寝たきりにしまうケースもあるそう。
「しかし、DFreeを使うことで個人の排泄までにかかる時間がわかり、おむつに漏らす前に自力での排泄を促すことができます。さらに、それぞれの排泄タイミングが把握できれば、介護士の業務効率は確実に上がり、それまで排泄介助にあてていた時間をリハビリやレクリエーション等の時間に生かすことができるはずです」
また、高齢者の排泄への不安を和らげることで、彼らのQOL(生活の質)の向上にも一役買っているという。そもそも、自立支援を目的とする介護施設において、おむつの使用は「最終手段」。寝たきりで、おむつに頼ることは、望ましくないのだ。
「おむつをしていると、それだけでその人のQOLは下がってしまいます。できれば、おむつをせずに、トイレで排泄できるようにしていくのが理想なんです」
DFreeの「D」は、おむつを意味する英語「Diaper」に由来し、「Free」は自由、とらわれない、解放を指す。その名の通り、DFreeはおむつからの自由になることを意味しているのだ。