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2026年1月、米グーグルはAIエージェントが人間に代わって買い物する「エージェンティックコマース」を発表した。加速度的に進化する生成AIは、買い物においても急速に存在感を高めつつある。人々の購買行動が変化する中、売り手側の企業にはどのような対応が求められるのか──。2025年11月に書籍『2030 次世代AI 日本の勝ち筋』(日経BP)を出版した、国立情報学研究所情報社会相関研究系教授の佐藤一郎氏に、生成AIを導入した企業が直面しがちな課題、AIエージェントが企業のマーケティングに与える影響について聞いた。
生成AIを「業務効率化のための道具」にすべきではない
──著書『2030 次世代AI 日本の勝ち筋』では、生成AI開発・活用の現在地から未来像まで多角的に論じています。本書を執筆した背景には、どのような問題意識があったのでしょうか。
佐藤一郎氏(以下敬称略) 2022年末から2023年にかけて、ChatGPTやGeminiといった生成AIが公開されて以降、日本国内でも多くの企業がこうした技術を導入し、業務への活用が進みました。
しかし現状を見ると、国内企業の多くは生成AIを「業務効率化」の手段として利用しており、本質的な「業務改革」にはつながっていないように感じます。
もちろん、業務効率の向上は企業にとって重要な成果です。ただ、生成AIが持つ本来のポテンシャルを考えたとき、単に既存の業務プロセスを自動化・高速化するだけでは不十分です。AIを道具として使うだけでなく、業務そのものを見直し、再構築していく──そんな業務改革の視点から活用を進める必要があるのではないでしょうか。
生成AIの最大の強みは、「限界費用」の削減にあります。限界費用とは、成果物を1つ追加で作る際にかかる手間やコストのことです。多くの企業には、「売り上げを伸ばしたい」「顧客満足度を高めたい」という思いがありながら、時間や予算の制約で実現できずにいた施策があるはずです。生成AIは、限界費用を下げることで、時間や予算を減らしてくれる、まさにそうした「やりたくてもできなかったこと」を可能にする技術なのです。
生成AIの研究に携わる立場からいえば、真に活用すべきは、業務の在り方そのものを変革し、「これまで不可能だったことを可能にする」という用途です。ここにこそ、生成AIの本質的な価値があると考えています。







