
徹底的に投資を行う成長事業は航空エンジン・ロケット分野一択とし、この先10年にわたり大きな利益を見込めない育成事業にグリーンアンモニア事業を据えるなど、事業の思い切った取捨選択を進めてきたIHI。改革の実現に向けて動き出した同社が描く競争戦略とはどのようなものなのか。そのストーリーを、IHIエグゼクティブフェローの土田剛氏と、一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏の対談を通じて読み解く。
事業ポートフォリオの取捨選択、その判断基準とは
楠木建氏(以下、敬称略) IHIは170年を超える歴史を持ち、資源・エネルギー、社会基盤、航空・宇宙・防衛、産業システム・汎用機械という4つの事業領域で展開されています。長い歴史、大きな規模、多岐にわたる事業分野。これは高度経済成長期を牽引してきた日本の典型的な大手製造業であり、「変わりにくい条件」が全てそろっているように思えます。
こうした企業にとって、会社全体を変えていくことは容易ではありませんが、IHIは今、大きく変わる方向にかじを切っています。
私が専門とする競争戦略という観点でいうと、儲かる会社とそうでない会社がある中で、企業の稼ぐ力がどこから来ているのかを層別して考えています。最初の層は、為替変動や政局の変化など、その時々の追い風によって収益を上げるものです。ただし、これはあくまで一時的な要因に過ぎません。
重要なのは、その次の層となる「どこで勝負するか」、すなわち事業ポートフォリオです。
IHIでは、事業譲渡なども進めていますが、事業の取捨選択をどのような基準で考えているのでしょうか。
土田剛氏(以下、敬称略) 2023年に策定した中期経営計画で大きく方針転換し、これまでの事業を、成長事業、育成事業、中核事業の3つに分類しました。
成長事業は、徹底的に投資を行う事業と位置付け、航空エンジン・ロケット分野の1つに絞りました。育成事業は、この先10年程度は短期的な利益よりも事業の立ち上げや育成を重視するもので、グリーンアンモニア事業を選んでいます。そして、育成事業に投資するキャッシュを確保するため、既存事業を中核事業として取捨選択しています。
判断基準としては、ROIC(投下資本利益率)やキャッシュフローといった財務指標も見ますが、最も重視しているのは「成長ストーリーが描けるか」です。事業部門に説明を求めた上で、経営陣が「なるほど、それはあるかもしれない」と腹落ちできるか。追加投資をしてまで大きく伸ばそうと思えない事業については、最適なオーナーに譲る判断をしています。








