ディフェンダー D7X-R

ディフェンダー OCTAベースの競技車両 D7X-R

 こうしたコンセプトに基づき、ディフェンダーはダカール・ラリーを含むFIA世界ラリーレイド選手権(W2RC)に参戦するための競技車両、ディフェンダーD7X-Rを開発した。

 そのボディーは、量産型のディフェンダーを作る生産ラインからそのまま持ってきたもので、モノコック式のボディー構造はもちろん量産車と同じ。安全性を確保するためのロールケージを除けば、ボディー剛性を強化するための部材は追加されていないという。

 エンジンとギアボックスもまた、ディフェンダーのフラッグシップモデルであるOCTAのものをそのまま採用。ただし、レギュレーションにしたがってエンジンには吸気量を制限するエアリストリクターが装着されるため、最高出力はOCTAの635psから大幅に減少して400ps台に留まる模様。それでもエアリストリクターは最高出力を発揮する高回転域のみで作用するため、最大トルクはオリジナルの750Nmと遜色のないレベルにあるという。

 いっぽうのサスペンションは、OCTAのトレードマークといっていい6Dダイナミックサスペンションが取り外され、ラリーで一般的なよりコンベンショナルなシステムを搭載する。この辺は、険しいオフロードをハイスピードで走行するラリーレードに参戦するためにはやむを得ないところだが、ボディー側のサスペンション取り付けポイントはオリジナルから変更されていないほか、オフロード性能を左右するサスペンションストロークはOCTAとD7X-Rでほとんど変わらないとの説明があった。

ディフェンダーはレースに通用するか?

 ディフェンダーは今年のダカール・ラリーに3台のD7X-Rを投入。そのうちの1台は、ダカール・ラリーで前人未踏の通算14勝(2輪部門で6勝、4輪部門で8勝)を上げたレジェンド、ステファン・ペテランセルに託される。残る2台は、リトアニア出身のロカス・バチュスカ、そしてアメリカ出身の女性ドライバーであるサラ・プライスがステアリングを握った。

右がステファン・ペテランセル、左はコ・ドライバーのミカ・メッジェ

 スタート前、ラリーの展望についてキャメロンは「市販車クラスに長年挑んできたトヨタは偉大な存在。彼らに簡単に勝てるとは思えないので、まずは完走、うまくいけば表彰台獲得を狙いたい」と語っていたが、フタを開けてみれば、序盤からペテランセルとバチュスカがトップ争いを繰り広げる展開となり、トヨタの1台を挟んでプライスが4番手につけていたが、1月3日にスタートしたラリーの10日目、ペテランセルのマシンにオルタネーター(発電機)のトラブルが発生。これで順位を大きく落としてしまった。

©Pawel Starzyk
3台のディフェンダーは全13ステージ中10ステージで1-2-3位を独占した

 しかし、ラリー終盤になってプライスがライバルの攻略に成功して2番手に浮上。ペテランセルも4番手を守りきると、その順位のまま13日目のステージを走り終え、ディフェンダーは望外の1-2-4フィニッシュを初年度にして達成したのである。

 この成績は、ディフェンダーの傑出したオフロード性能と堅牢性・耐久性を証明するものといっていだろう。

 なお、ペテランセルとバチュスカのふたりは、今後開催される残る4戦のW2RCにも参戦するので、そこでの活躍も期待したいところだ。

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総合優勝となったロカス・バチュスカ(右)とコ・ドライバーのオリオール・ビダル(左)

 最後に、今回のダカール・ラリーは日本人にとっても嬉しいニュースがあった。日本人ライダーとして唯一2輪クラスにエントリーした藤原慎也選手が初出場ながら90人中55位で完走を果たしたのだ。

藤原慎也と彼が駆ったホンダ CRF450 RX Rally

 成績だけを見るとあまりぱっとしないようにも思えるが、藤原選手は2輪車メーカーからのサポートを受けていない純粋なプライベーターであるだけでなく、スタート3日目のアクシデントで右目周辺に骨折を負い、これ以降はときおり物が二重に見える症状に苦しんだほか、6日目の転倒では鎖骨を骨折。ドクターから「もう走れない」と言われながらも、残る5000km近くを気力だけで走破し、完走に漕ぎ着けたのである。藤原選手の「死力を尽くして冒険に挑む」姿勢こそ、ダカール・ラリーの本質といっても過言ではないだろう。