パノラミック・ビジョンとパノラミックiDriveは、運転中でも視認性がよく操作性にも優れている。今後は随時、すべてのBMWモデルがこのインターフェイスに置き換わる予定

コックピットは目新しく使いやすい

 キーを預かって乗り込んでみると、まず目に飛び込んでくるのはやっぱりパノラミック・ビジョンです。

 フロントウインドウの下に必要な情報が投影される仕組みで、そのコンテンツの一部は基本的にセンターディスプレイを介したパノラミックiDriveによってコントロールします。「ハンズ・オン・ザ・ウィール(手はハンドルに)、アイズ・オン・ザ・ロード(視線は道路に)」というコンセプトですが、運転中でも確かに視線移動は少なくて済むし、使っていくうちに自分にとって必要な情報が分かってくるので、その場合は投影されるコンテンツを随時入れ替えながら、自分仕様に簡単にカスタマイズできるのです。

 これもBMW各車に採用されるようになり、そのうち見慣れてしまうのかもしれませんが、現時点ではまだまだ目新しさが感じられるし、機能性という観点においてもiX3においては申し分ありませんでした。

サスペンションに驚く

 パノラミック・ビジョンの他に、走り出してからずっと感心していたのがiX3の優れた乗り心地です。

 路面からの入力に対してはその大小を問わず上手に吸収して、ボディが大きく揺すられることがほとんどありません。あまりにも乗り心地がよいので、エンジニアに「これは本当にコンベンショナルなサスペンションですよね?」と確認したほどでした。試乗車のiX3のサスペンションは、金属ばねとダンパーを組み合わせた一般的なもので、電子制御式ダンパーでもなければエアサスペンションでもありません。それにもかかわらず、速度や路面状況が刻々と変わる中でもSUVの大きなボディの動を巧みにコントロールしていました。

フロントはダブルジョイントスプリングストラット、リアは5リンクなので従来のBMWの標準的な形式と同一

 このサスペンションが優れた操縦性も両立できていることは、一般道だけでなくサーキットでも確認できました。加減速を繰り返すサーキット走行では、ボディの動きが大きくなりがちですが、これを最小限に留めているので姿勢変化が小さく、旋回中には抜群の安定感を披露しました。

 ブレーキフィールもまったく問題ありません。通常のブレーキと回生ブレーキの使い分けや切り替えなどに生じる違和感は皆無で、十分な制動力を持ち合わせていました。

 よく出来たエンジンを搭載したクルマに乗ると「気持ちよく吹け上がり、伸びのある加速感が味わえる」と表現したりします。iX3は電気自動車ですがそんな加速感を味わえて、BMWの6気筒エンジンを少し想起させるようでした。「いままでもっともBMWらしいデザイン」とデザイナーが自負していましたが、たとえ電気自動車になろうとも、iX3は走りもまごうかたなきBMWだったのです。

操縦性や機能性など、項目ごとに専用のコンピュータを搭載し、効率的かつ統合的に各種デバイスやクルマの走りをコントロールする。これをBMWは“スーパーブレイン”と呼んでいる