食は「名古屋の誇り」を証明する舞台装置
ダイニングの圧はさらにこの感動を超える。カンテサンスが手掛けるブリアンス、昇龍 byうかい亭、日本料理 丈、中国料理 柳城、尾張 粋 稲葉、鮨旬美 西川……。いずれも国内最高峰の実力派が名を連ね、星の数だけ単純に足すと「ミシュラン8スター」に相当する。世界的に見ても異例の密度である。
日本料理「丈」の季節感あふれるお椀
かつて名古屋の食文化は「B級グルメの街」と軽んじられることさえあった。しかしこのホテルは、そうした外部のイメージを一瞬でくつがえす。「名店のために泊まる」というラグジュアリー体験を、名古屋の地で再構築してしまったのだ。
特筆すべきは、鮨旬美 西川、稲葉を除いてすべて直営である、という点である。単なるテナントの集合体ではなく、ホテル全体が一つの美意識の下に構成されている。これも、外来ブランドに頼らず、自前の文化資本で勝負してきた名古屋らしさと言えるだろう。
そして忘れがたい体験となる「世界一の朝食」。「稲葉」での朝食は、十数品が一品ずつ仕上げられ、私一人のために、スタッフ5人が目の前で新鮮な食材から工程を見せながら創り上げて提供してくれる。デザートのわらび餅さえ、カウンター越しに作られた温かなまま供される。パフォーマンスは圧倒的にやる、驚かせるレベルまで極める、というこの姿勢こそ、名古屋のDNAに近い。
「世界一の朝食」を提供する稲葉。目の前で料理が創り上げられ、デザートのわらびもちにいたるまでできたてをいただける
