キリンホールディングス デジタルICT戦略部 DX戦略推進室 室長 野々村俊介氏（撮影：酒井俊春）

　デジタルを重要な成長ドライバーと位置付け、「DX道場」の開講や「BuddyAI」の開発といったDX施策を進めているキリンホールディングス。これまでは本社のデジタル専門部門が中心となってDXを主導してきたが、現在は現場主導型へと変化しつつあるという。現場の意識やデジタル活用法はどう変わったのか。同社が見据えるDXの次のフェーズとは。デジタルICT戦略部 DX戦略推進室 室長の野々村俊介氏に話を聞いた。

地道な「社内営業」から戦略的重点化へ

──キリングループでは数年来、DX推進に力を入れてきました。ここまでどのような手応えを感じていますか。

野々村 俊介氏（以下、敬称略）　経営戦略の一環としてDXを推進していく方針を明確に打ち出し、経営企画部の直下にDX戦略推進室が新設されたのが2020年です。ただ、必ずしも最初から現場に浸透していたわけではありません。

　会社の方針は共有しつつも、当初は自部門で何をどう進めるべきか、社内全体で理解が深まっていなかったのが実情です。実際、「今のやり方の方が成果を出せるのでは」という声が上がることもありました。

　そのため、最初は社内営業のような形で各部門を回り、対話を重ねていきました。部門によって課題意識も異なりますから、全社で統一された進め方というよりも、個別課題に対して「デジタルで何ができるか」を一緒に考え、一つ一つ提案しながら実装するというスタイルで取り組みました。

　また、2021年には、グループ社員がデジタルリテラシーやDX推進に必要なスキルを習得できる場として「DX道場」を開講しました。これは単にツールの使い方を教える場ではなく、「業務の中でどうデジタルを使うか」という視点を養うことを目的にしています。