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 統合報告書は、企業の財務情報と非財務情報を統合した“企業の見取り図”とも言える重要資料だ。本連載では、株式アナリスト出身の椎名則夫氏が、読み物としての面白さと投資家向け情報としての有用性の両面から、注目すべき統合報告書を厳選して紹介。 初回は、業界内外で“お手本”と称される伊藤忠商事の統合レポートを徹底解説する。

統合報告書、読んでいますか

 はじめまして。

 この連載「統合報告書の歩き方」では、さまざまな企業の統合報告書を取り上げ、その特色やポイントを分かりやすく紹介していく予定である。ぜひお付き合いいただきたい。

 筆者はもともと資産運用会社の株式アナリストの経歴が長く、現在は業務の一つとしてIR(投資家向け広報)支援をさせていただいている。そのため、内外の企業の決算報告書、年次報告書、IR資料、および統合報告書の多くに目を通してきた。こうした経験を踏まえて読者にお伝えしたいのは、今日の統合報告書には良質なものが多く、発行企業の良き水先案内人であり、時間が許す限り多くの方に目を通してもらいたいということである。

 では、統合報告書とは何か。これは主に有価証券報告書が担ってきた企業の財務情報と、企業統治・企業の社会的責任・知的財産(知財)などの非財務情報を一体として統合した一本の報告書を指す。いわば企業をその“表玄関”から見た見取り図にあたる。

 主要な企業が、わざわざそうした見取り図を提供してくれているとはありがたい話だ。優良な報告書には企業の立ち位置を知るために必要十分な情報が網羅されている。ビジネス上の示唆も多い。「機関投資家のためのもの」とスルーするにはもったいない。

 とはいえ、統合報告書が万人向けではないのも事実だ。財務の基礎知識や資本市場の決まり事など、一定の心得が前提になっている上、企業ごとに内容の方向性や詳しさが異なるため、道案内があった方が好ましい。

 そこで筆者が「一度は目を通しておきたい統合報告書」をピックアップし、「読み物としての視点」と「投資家向け情報としての視点」からポイントを解説することで、どなたでも気軽に統合報告書に目を通すことができるようしたいと考えている。