ポルシェ 911のスタンダード「カレラ」に試乗 992.2型へのマイナーチェンジで何が変わったのか？

.2でカレラは変わったのか？

　前置きがかなり長くなったが、ここからがマイナーチェンジを受けた“タイプ992.2”と呼ばれる911カレラの試乗記である。

　タイプ992のカレラと足回りの方向性ががらりと変わったことは、乗り始めた瞬間に気づいた。先代にあたる“タイプ991”以前のカレラ同様、加減速を行うとほどよくノーズが沈む込んだり浮き上がったりしてくれる。おかげで路面からの突き上げ感も軽く、乗り心地も良好だ。

「そうそう、これこれ！」

　私は心のなかでひとり呟きながら、アクセルペダルを軽く踏み込んだ。

　水平対向6気筒の3.0リッター・エンジンはターボチャージャーを組み合わせて394psと450Nmを生み出す。正直、最近のスーパースポーツカーに比べたら驚くほどの数値ではないけれど、少なくとも公道で走らせるなら、このパワーで十分以上。しかも、このボクサー6（水平対向6気筒の別称）はターボエンジンとは思えないほど反応が素直で扱い易いうえ、レヴリミットの7500rpmまで素直に回りきってくれる。さらにいえば、最近のポルシェはエンジン音のチューニングにも熱心とあって、この911カレラも乾いた快音を響かせてくれる。スポーツカー用エンジンのお手本のような仕上がりだ。

992.2においてデジタル化されたメーター部。デザインを選ぶことができ、往年の5連デザインのほか写真のような3連もある

　ワインディングロードを走らせれば、期待どおりというべきか、軽いブレーキングで前荷重の姿勢を作り出すのは容易。このときの感触でタイヤのグリップ感を掴むドライバーは少なくないはず。おかげで、最新の911カレラはタイヤがどれだけグリップしているかをしっかり把握したうえでコーナリングができる。その意味において、実に安心感の強いハンドリングといえる。

　もちろん、姿勢変化が起きるといっても、それはコンパクトカーやミニバンとは別次元の話で、ワインディングロードを走っているときに911カレラが不安定な姿勢に陥ることは皆無。個人的には、安心感が強くて操りやすく、さらには快適性も高い「往年の911カレラ」が帰ってきたようで、嬉しくて仕方がなかった。

　もっとも、ネガがまったくなかったかといえばそうとも限らず、路面がうねりながら大きく曲がり込むコーナーではロールが反復する傾向が見られた。この辺は、より高度なシャシーコントロールを備えたカレラSやカレラGTSなどであれば、問題なくクリアできるだろう。

　また、これは必ず起きるというわけではなかったけれど、ステアリングを切り込んだとき、瞬間的にフロントタイヤのグリップが抜けるような傾向が見られた。もっとも、タイヤのグリップはすぐに回復したので危険なことは一切ないのだけれど、一部報道に見られる「最新の911カレラはアンダーステア（思ったほどクルマが曲がってくれない特性を指す）」といった指摘は、ひょっとするとこういった症状を指しているのかもしれない。

　いずれにせよ、タイプ992.2でもっとも注目されているのは、911として初めてハイブリッド・パワートレインを搭載したカレラGTSのほうだろう。こちらについては、機会があれば改めて報告させていただきたい。