文:藤野 太一

ポルシェの虎の子

2024年1月末にワールドプレミアされた2世代目ポルシェマカン。タイカンに続くポルシェのBEV(電気自動車)第2弾となるモデルだ。フランス・ニースから少し南下したリゾート地アンティーブで行われた国際試乗会で、BEV専用車になったマカンを試した。

マカンは2014年に発売されたミッドサイズSUV。約10年のあいだに2度の改良を加えながらつくり続けられてきた。2023年のポルシェの世界販売台数をみると史上最高のセールスを記録しており、モデル別にみればトップがカイエンの87,553台、2位がマカンの87,355台と、まさにポルシェにとっての虎の子だ(ちなみにマカンはインドネシア語で「虎」の意)。

ポルシェはいま2030年までに新車販売の80%以上をBEVにするという戦略を掲げており、人気のマカンをBEVにすることでその比率を高めようという狙いがあるわけだ。ただし、最近はBEVのセールスの伸びが鈍化しているという報道もみられる。それについてポルシェはどのように対処していくのかについては後述する。

こちらはSPEED YELLOWというカラーのマカン ターボ

よりカラフルに

試乗の発着地点となるヨットハーバーには色とりどりの新型マカンが用意されていた。日本仕様でも標準色(有償オプションを含む)として14種類が設定されている。さらにペイントトゥサンプル(PTS)というオーダーカラーを選べば59色から選択が可能になる。いまラグジュアリィブランドだけでなく、スポーツカー市場においてもユーザーのより自分好みにカスタマイズしたいというニーズが高まっており、それを受けてのものだ。

試乗会に用意されたのは、「マカン4」とハイパフォーマンスモデルの「マカンターボ」の2グレード。この時点ではまだ未発表だったが、7月には後輪駆動モデルの「マカン」と「マカン4S」も追加で発表されている。

新型マカンは、BEV専用モデルになった。BMWなどは主にICE(内燃エンジン車)にもBEVにも使える共用プラットフォームで両者をつくりわける戦略をとっているが、ポルシェはアウディとの共同開発によるBEV専用の「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」を採用する。これによってポルシェはマカンを、アウディはQ6 e-tronを導入。今度はVWグループの他ブランドにも展開されていくことになる。

マカンのシャシー

パワートレインは、前後アクスルに電気モーター(永久励磁型PSM)を配置した2モーター式で4輪を駆動する。800Vアーキテクチャーを備えたPPEのフロアには総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーが効率よく敷き詰めている。

ボディサイズは全長4,784mm、全幅1,938mm、全高1,622mmで、ホイールベースは2,893mm。Cd値0.25とまるでクーペのような空力性能を誇る。

BEV専用プラットフォームの恩恵

一方でBEV専用プラットフォームの利を活かし、前後シートともに先代モデルより着座位置が低くなった。スタイリングから想像するよりもゆとりのある室内空間になっており、後席は身長180cmの大人が座ってもしっかりとヘッドクリアランスが確保されていた。

そしてラゲッジスペースも先代モデルよりも広くなっている。リアスペースは通常540リッターで、背もたれを倒すと最大1348リッターに拡大。そしてフロントボンネット下には“フランク”と呼ばれる容量84リッターのセカンドラゲッジコンパートメントがある。

フロントにもラゲッジスペースがある

インテリアは、タイカンにはじまった最新デザインの流れを汲んだもの。ダッシュボードは12.6インチの自立型メーター、10.9インチのセンターディスプレイ、オプションの10.9インチ助手席用ディスプレイが一体化したブラックパネルとなり、タイプ930の911のインテリアを彷彿とさせるT字型を強調している。

BEVだからとすべてをデジタル化するのではなく、スタート/ストップボタンをはじめ、エアコンのスイッチ類、オーディオのボリュームなど、アナログのコントロールエレメントを残しているのがポルシェらしいところ。

エクステリアで特徴的なのは、一般的なヘッドライトの位置にある特徴的な4本のLEDライトが、実はデイタイムランニングライトであること。

メインのライトユニットはその真下のバンパーに埋め込まれた四角いもので、ヘッドライトを2つのパーツに分けてデザインしている。