アウディAGは、2021年の上海モーターショーでワールドプレミアした「A6 e-tronコンセプト」の市販モデル「A6 e-tron」を発表した。アウディのアッパーミッドサイズセグメントモデルであるA6のBEV版であり、スポーツバックとアヴァントの2つのボディタイプで展開される。
アウディの主力「A6」のBEV
2021年に発表した経営戦略「Vorsprung 2030」にて、2026年以降に世界市場へ投入するニューモデルは、すべて電気駆動システムを搭載すること、そして2033年を期限とし内燃エンジンの生産は段階的に廃止することを宣言しているアウディ。
こうした電動化戦略の重要な一翼を担うのが、主力モデル「A6」のBEV版である「A6 e-tron」だ。スポーツバックとアヴァントがラインナップされるが、いずれのボディタイプもアウディのBEVとしては初となる。
A6 e-tronの特徴のひとつが、アウディがポルシェと共同開発した新世代のBEV用プラットフォーム「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」を「Q6 e-tron」につづいて採用したこと。
コンパクトで高効率な電気モーター(総電力量100 kWh 正味容量94.9 kWh)と、新たに開発されたPPE用のリチウムイオンバッテリーにより、一充電航続距離はスポーツバックで最長756km、アヴァントで最長720kmを実現。一方、高性能モデルである「S6 スポーツバック e-tron」の一充電航続距離は最長675km、同アヴァントが最長647kmとなる。
パフォーマンスに目を向けると、「A6 e-tron」のシステム出力は270kW、0-100km/h加速は5.4秒、最高速度は210km/hを記録する。一方、「S6 e-tron」のシステム出力は370 kW(ローンチコントロール時405 kW)、0-100 km/h加速は3.9秒、最高速度は240 km/hに達する。ちなみに、駆動方式は「A6 e-tron」が後輪駆動、「S6 e-tron」はクワトロ=四輪駆動となる。
優れた航続距離に貢献しているのが、最大220kWの回生ブレーキ能力だ。日常のブレーキ操作の約95%に対応し、運動エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換する。回生はフロント・リヤ両アクスルで行われるが、軽度の減速は効率化のためにリヤアクスルが担う。
また、PPE採用の恩恵として、前後アクスルごとのブレーキブレンディング(機械式ブレーキと回生ブレーキの最適な組み合わせ)が可能となり、スムーズで一貫したペダルフィールを実現。これにより、ドライバーは従来の内燃機関車と変わらない自然な制動感覚を得ることができる。
長い航続距離と同様に注目すべきなのが、充電性能だ。バッテリー電圧は400Vが一般的だが、A6 e-tronでは800Vに。さらにDC充電能力を最大270kWとすることで、適切な充電ステーション(High Power Charging、HPC)において、10分間の充電で310kmの一充電航続距離を得ることができ、21分で充電状態10%から80%の充電が可能だという。
シングルフレームグリルに開口部ナシ!
ダイナミズム、プログレッシブ、エレガンスに焦点を当てたと謳われるエクステリアは、スリムなデザインのデイタイムランニングライトとワイドなシングルフレームグリルからなるフロントまわりが印象的。エンジンを持たないBEVゆえにグリルは閉ざされており、グリルを囲むブラックマスクとともにe-tron であることを主張している。
アヴァントはDピラーが前方に鋭角に傾斜した非常にフラットなルーフラインガ特徴で、Aピラーからルーフスポイラーにかけてあしらわれたアルミ調のトリムなど、エンジン車の「A6 アヴァント」にはないディテールが与えられている。
特筆すべきは、空力性能の高さだ。スポーツバックの空気抵抗係数(Cd値)は、アウディ史上で最も優れた0.21を実現。アヴァントも0.24という秀逸なCd値を達成している。この優れた空力性能は、航続距離の延長と高速走行時の安定性向上に大きく貢献している。
ライティングにもアウディならではのテクノロジーが採用された。フロントにはLED技術を備えたデジタルデイタイムランニングライトがオプション設定され、リアには第2世代のデジタルOLEDリアライトも用意。450のセグメントを持つ計10枚のパネルで構成されるOLEDリヤライトは、独自の警告シンボルや点灯パターンが表示可能。これにより、後続車両に対してより明確な情報伝達ができ、道路安全性の向上に寄与するという。
ちなみに、ボディサイズは全長が4928mm、全幅が2137(ミラーを含む)mm、全高はスポーツバックが1487mm、アヴァントは1527mm。ホイールベースは2946mmとなる。
アウディの新しいデザイン哲学によって定義されていると謳われるインテリアは、カーブデザインとOLED技術を採用したMMIパノラマディスプレイを中心に、洗練された空間を創出。
11.9インチのアウディ バーチャルコックピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイで構成されるこのシステムは、10.9インチのMMIフロントパッセンジャーディスプレイとともに、直感的な操作性と優れた視認性を実現している。
オプションのARヘッドアップディスプレイ(AR HuD)は、ドライバーに向かってフロントガラス全体に大きく傾斜した画像を投影。速度、交通標識、アシスト情報、ナビゲーションシンボルなどの関連情報を表示する。また、オプションのバーチャルエクステリアミラーを装着した場合、ドアシルの明確に見える位置にディスプレイが配置される。
インフォテインメントシステムには、Android Automotive OSを採用。OTA(Over-The-Air)アップデートに対応しているため、常に最新のアプリケーションやサービスを利用することができる。
注目すべき機能の一つが、ChatGPTを統合した自己学習型のアウディアシスタントだ。このシステムにより、より自然な対話を通じて車両の操作や情報取得が可能になるという。
A6 e-tronは、最新の運転支援システムを搭載し、安全性と快適性を高めている。新機能のアダプティブ ドライビング アシスタント プラスは、加速、ブレーキ、速度と設定距離の維持、車線維持をサポート。地域によっては、車両のセンサー以外に高解像度の地図データやクラウドで集約された他の車両のスワームデータを使用して、運転行動を改善するという。
「A6 e-tron」および「S6 e-tron」の日本への導入時期は未発表ながら、ドイツ本国では9月よりオーダー受け付けを開始。さらに今後、より小型のバッテリーを搭載したエントリーモデルの導入も予定しているという。