マカン 4か? マカン ターボか?

まずマカン4に乗った。事前にセットされたナビゲーションの案内にしたがってクルマを走らせる。夕方の渋滞するアンティーブの市街地をぬけると、まるでモンテカルロ・ラリーのような山岳コースへと導かれた。最高出力387PSで、オーバーブースト時には408PSを発生。最大トルクは650Nm。0-100km/h加速は5.1秒とその性能は必要にして十分なもの。大きくて重いクルマながら、ステアリング操作に対する舵の効きも正確なもので、軽快な身のこなしで山岳路を走り抜けていく。BEVになってもポルシェはポルシェなのだと感じる。

翌日のセッションでは、ターボに乗る。

昨日はマカン4で十分だと思っていたが、動き出した瞬間にやはりターボはいいと思わされる。最高出力584PSで、オーバーブースト時には639PSを発揮、最大トルクは1130Nmと4桁に到達。0-100km/h加速は3.3秒なのだから速い。といっても普通に走行しているぶんには、アクセルペダルの操作に対して決して過敏ではなく、でも瞬時に反応しまさに意のままに動くイメージで、市街地でも高速道路でも運転がしやすい。足回りは22インチタイヤ+エアサスの組み合わせだったが、乗り心地も洗練されていた。昨日と同様に山岳路での試乗だったが、さらにクルマとの一体感が味わえた。

試乗後にエンジニアにマカン4とターボの違いについて尋ねると、モーターの大きさだけでなく、取り付け位置や剛性なども含めてリアアクスルまわりの設計が別物になっていると教えてくれた。エアサスペンションも機構としてはマカン4と同じものだが、ダンパーのセッティングが異なり、またリアアクスルの電子制御式ディファレンシャルロックであるポルシェトルクベクトリングプラス(PTV Plus)や最大操舵角5度のリアアクスルステアリング(オプション)も装備していた。そして前後重量配分は、マカン4では50:50のところ、ターボでは48:52とより後輪へのトラクション重視のセッティングになっているという。やはりポルシェのエンジニアが“ターボ”にかける思いはひとかたならぬものがあるようだ。

日本ではしばらく従来モデルも併売

実は当初、新型マカン(BEV)の発表にさきがけて、従来のICE(内燃エンジン車)と新型のBEVを併売するとアナウンスされていた。しかし、想定外にも欧州域内でサイバーセキュリティ法が施行されることになった。それに対応するには相当はコストと時間を要するようで、欧州のほとんどの国ではICEマカンは販売終了になってしまう事態が起きた。ちなみに日本でも2022年から同様の規制が始まっているが猶予期間が与えられており、しばらくマカンはICEとBEVが併売される。

先述したように世界的にもBEVのセールスが思うようには伸びていない現実もある。そこでポルシェは、来年に発表予定の第4世代のカイエンはBEVになると発表済みだったが、7月にあらためて多額の技術投資を行い現行の第3世代のICEそしてハイブリッドモデルを併売するとアナウンスした。現時点でBEVの1本足打法に切り替えるのはいささか早計だと判断したのだろう。

さらにアウディが次世代のICE用プラットフォーム「PPC(プレミアムプラットフォームコンバッション)」を開発し、それをもとに新型「Q5」を発表するという。そもそもマカンとQ5は姉妹車なわけで、あくまで希望的観測だが、もしBEVマカンのセールスが思わしくなければPPCをベースとした新型ICEマカンの登場もありうるかもしれない。

自動車メーカーにとってはまさに受難のときだが、ポジティブにとらえればユーザーには多くの選択肢があるともいえる。少なくとも日本でマカンを検討の方、ICEかBEVか。いまならどちらも選択可能です。