22年にはブラジルでのモールへの新規出品者数は17万人超に達しており、高成長が続く。モールでの取引総額の増加に伴い、22年のブラジルでの納税額は35億レアルと、21年比31%増加したと明らかにしている。
23年には22年比12%増の190億レアルを技術開発などに用いる計画を示した。19年時点での投資額は20億レアルに過ぎなかったが、年々投資を増やしてきた。電子決済や電子広告、物流網に投資を増やして顧客の利便性向上につなげて、顧客基盤を一段と広げようとしている。同社の取引の荷物を運ぶ黄色い車はサンパウロ市内の至るところで見かける。
中国発のファッションECのシーインは今後数年で7億5000万レアルを投資して取引先の電子化を支援する計画を示している。26年末までに同社が取り扱う製品の85%をブラジル産とする予定で、そのために今後3年間で地場の衣料メーカー2000社と供給の契約を結ぶことを決めた。
シーインは取引先が受注管理をオンラインでできるようにシステム構築を手助けして、過剰在庫の改善を支援する。投資資金の融資も行うという。今後3年で約10万人の雇用創出につながるとしている。同社ブラジル法人幹部は「手ごろで、質の高いブラジル産の衣料品輸出を増やしていきたい」と展望している。
米アマゾン・ドット・コムは22年7月、ブラジルの物流会社トタル・エクスプレスの株式の約1割を取得したと報じられている。同社は出版大手グルポ・アブリルの傘下の企業で、すでにアマゾン向けに配送サービスを手がけていた。一部出資によって関係強化を狙った形だ。
アマゾンはブラジルに12カ所の配送センターを構えているが、「競合企業の半分以下にとどまる」(経済紙バロル)といい、依然として配送は課題となっている。今後は24時間以内の配送を拡大していきたいと考えている。
貧民街でもネット普及
オンライン市場の拡大の背景には、ファベーラ(貧民街)のような場所でも携帯電話やネットの利用が進んできたことがある。例えばリオデジャネイロ州には約1300カ所のファベーラがあり、総人口の約2割がここに居住している。
リオデジャネイロ市北部にあるビラクルゼイロはこの中でも最も危険な地区のひとつといわれてきた。2013年に訪れたこのビラクルゼイロ地区では、欧州企業との連携でネット整備が進んでいた。
住民組織のリーダー、アントニオ・ティブルシオは「2010年以前は、とてもじゃないがあなたのような外国人をここに受け入れることはできなかった」とほほ笑みながら語りかけてきた。