Audi S5 Sedan

3リッターV6とSモデルの思想を受け継いだ新S5

 今回はA5のハイパフォーマンス版であるS5 セダンにも試乗できた。こちらはセダンボディーに3.0リッターV6ガソリンエンジンを搭載した4WDモデルとなる。

2,994ccのV6エンジンはマイルドハイブリッドシステムを得てさらに出力を高めている

 V6ゆえに回転フィールのスムーズさやレスポンスの鋭さは4気筒のTFSIモデル以上。そしてS5にもMHEVプラスが搭載されていることもあり、全域でTDIを凌ぐ力強さが味わえた。いっぽうで、ハイパフォーマンスモデルゆえにその乗り心地を心配する向きがあるかもしれないが、伝統的にハイパフォーマンスモデルでも乗り心地を犠牲にしないのがアウディのクルマ作り。この思想は新型S5にもしっかりと受け継がれていた。もちろんハンドリングは正確かつシャープ。

Audi S5 Avant

唯一の弱点は、重いV6エンジンを搭載するがゆえに、コーナーに進入する際の身のこなしがさほど軽快ではなかったことだが、これを除けばあらゆる点でTFSIとTDIを凌いでいた。その分、価格も高めの設定となるものの、それだけの価値を感じさせる1台だった。

Audi S5のコックピット

 ところで、3台に共通して感じられたのがステアリングのカッチリした印象で、わずかに操舵したときの反応が、過敏にならない範囲でより的確になっていた。これを実現するためにステアリング系の剛性を全般的に高めると同時に、パワーステアリングのセンサーを改良。センサーに起因する「捩れ感」を解消することで、これまで以上にシャープなフィーリングを生み出したという。

 いずれにしても、細部にいたるまでこだわり抜いたクルマの作り込みは、多くのファンを唸らせるはず。EV化だけでなくクルマ本来の完成度を追求する姿勢を改めて示したという点で、アウディ好きにはこのうえなく嬉しいニューモデル誕生となったように思う。