トレッキングで目撃できたらラッキー!?

 ゴリラ・トレッキングの参加者は、公園レンジャーに導かれグループ(6~8人)でブウィンディの原生林に入ってゆきます。まず探すのは、前日のベッド(巣)です。大人のオスは、地面に毎日新しい草のベッドを作り、朝かならず糞をしてから動き出します。数頭のメスと子供たちからなる10数頭の決まった群れ(家族)で生活し、1日に移動する距離はせいぜい500m……巣が見つかれば、群れは近くにいるはずです。レンジャーは気配を感じたら、幾度も「うっ・ん~ん」と口を閉じノドを絞って鼻から抜くような声で、あいさつをします。これが“こんにちは”です。トレッキング客は敵ではなく、友だちがやって来たよ、と知らせます。

レンジャーの案内でゴリラ・トレッキング イークスガンダ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 トレッキング中に出会えたらラッキーな、ゴリラの3つの生態を紹介しましょう。

1 子供をおんぶするシルバーバック

 マウンテンゴリラは、黒いモコモコの長い毛で覆われています。苔むした雨林がガサゴソと揺れ、巨体がヌウォと横切りました。家族を率いるリーダーのシルバーバックの登場です。大人のオスは、13歳頃から背中の毛が銀色に変わることから、こう呼ばれます。身長は180cmくらいで、体重は200kg超え。1日の大半を地上で過ごすことが多いゴリラは、外敵から身を守るために、身体を大型化させました。

 また、ゴリラは、父親が子育てをする珍しい動物です。母親は、子供が1歳くらいになると父のシルバーバックに預けます。小さなゴリラの子が父の背中に乗っかり嬉しそうに弾んでいる光景は、まるで日曜日の家庭の一コマを想わせます。研究者は、こう力説します。「ゴリラが生きられないような世界は、人間も生きられない」と。

 

2 のどかな放屁の音

 ゴリラは菜食主義者です。食事に作法があるみたいに、茎をしごいて葉をキレイにむしったり、葉っぱを1枚ずつ千切って、優雅に口に運びます。主食は、草や葉・果実などで、熱帯雨林には一年中豊富です。そのため、縄張りをつくって、食べ物を奪い合う必要がありません。争いごとを嫌い、森で平和に暮らすようになりました。

 大きな体を維持するため、食べる量は1日20kg。それを消化するために腸がとても長くて、お腹がポッコリ出ています。ゆっくり繊維を分解するため、食べたらしばしお昼寝。お腹にガスがたまると、気持ちよさげに音を轟かせます。森でブゥ・ブーと日がな一日、のどかに放屁するのです。

 

3 森に木霊するドラミング

 ぜひ見たいゴリラの生態が“ドラミング”です。シルバーバックが突如立ち上がり、胸を両手で叩き、森に「ポコポコポコ」と透明な音が木霊(こだま)してゆきます。ゴリラのオスは、大人になると胸に共鳴袋ができて、大きな音が鳴るのです。このドラミングは、群れに何かが近づいた時に自分の存在を相手に知らせ、無用な戦いを避ける合図です。しかし、これが戦いに挑む威嚇だと受け取られ、長い間、ゴリラは「凶暴なジャングルの悪魔」だと伝えられてきました。

 その始まりは19世紀、アフリカ探検の時代に遡ります。ヨーロッパの探検家は自らの旅をより劇的に物語るために、「悪魔のような怪物が住む暗黒大陸」というイメージをアフリカにまとわせました。森で出会うとゴリラは、銃で撃ち殺されたのです。

 1933年にアメリカで公開され、空前の大ヒットとなった映画「キングコング」は、そんな密林の悪魔をモデルにしています。エンパイア・ステートビルの屋上で胸を叩いて戦闘機を威嚇する姿は、偏見に満ちたものでした。ゴリラの素顔が知られるようになったのは、ここ30~40年のことに過ぎません。

 森をさまよい、好きなものを食べ、満腹になれば寝ます。密林の王者がつくった平和な楽園は、私たちが失ったものへの郷愁を覚えさせるのです。

決して悪魔ではなく心優しいゴリラ 写真=AP/アフロ

 ウガンダへの直行便はありません。中東のドバイを経由して、約22時間(乗り継ぎ時間を含む)でエンテベ国際空港へ。そこから車をチャーターすれば、首都のカンパラを回って、10~12時間でブウィンディ原生国立公園のゲートに到着します。

 ゴリラに一目会うだけの長旅、その価値はお金や時間では計れません。

 

※ゴリラ・トレッキングの詳細は、変更される場合があります。ロッジ等の宿泊施設を含め、予約状況を必ずご確認ください。また交通手段・治安状況なども、現地にお問い合わせください。

※旅行に行かれる際は外務省海外安全ホームページなどで現地の安全情報を確認してからお出かけください。

https://www.anzen.mofa.go.jp/