1ランク上の存在に

M177型4リッターV8ツインターボエンジンは、最高出力585PS、最大トルク800Nmを発揮。AMGスピードシフトMCT9速トランスミッションを組み合わせる。このM177型エンジンは、S63やG63にも搭載されるものだが、GT用にオイルパンを変更し、エンジンやターボ、トランスミッションなどがハードなサーキット走行に耐えられるよう特別な冷却システムを備えている。

4WDシステムは、前後トルク配分の連続可変が可能な「AMG  4マチック+」で、走行状況やドライバーの操作に応じて前後トルク配分を50:50〜0:100 の間で連続可変させるもの。電子制御によって状況に応じた理想的なトルク配分が行われるため、あらゆる路面でトラクションを最大化することが可能。ドリフトモードでは前後トルク配分を 0:100に固定することが可能でFRでのドリフト体験を味わうこともできる。

このよくできた4WDシステムにあわせて、サスペンションは4輪すべてに5リンク式を採用。これが走行安定性を高めるだけでなく、コンフォート性の改善も大きく寄与している。伸び側と縮み側の減衰力を独立して制御する電子制御ダンピングシステムやコーナリングや車線変更時のロールをより効果的に抑制する連続可変式電子制御スタビライザー、リアアクスルステアなどハイテク装備満載で、公道で少々アクセルペダルを強めに踏んだとて何も起こらない、盤石のスタビリティを誇る。

あらためていいなと感じるのは、やはりAMG製V8エンジンの振動であり音だ。最新の規制をクリアするため低速域では抑えられているものの、エンジン回転が高まるにつれ力感のあるエキゾーストノートを放つ。実は数字だけを見れば、システム最高出力680PS、最大トルク1020Nmと「C63 S Eパフォーマンス」のほうが上だ。これはAMG製2リッター4気筒エンジンをベースにF1マシン譲りの高度な駆動システムを搭載したプラグインハイブリッドモデルなのだが、同じ「63」であってもそれとこれとはまったくの別物。個人的には、時代が許す限りこのV8を選びたいと思う。

新型AMG GTは、先代に色濃くみられたスポーツカーとしてのドライビングファンを維持しながらも、デイリーユースからロングドライブまでオールマイティに使えるグランドツーリングカーになった。価格的にも性能的にも、先代がポルシェ911カレラシリーズの対抗モデルであったのに対して、この新型は911ターボのライバルにステップアップしたことがわかる。やはりメルセデスで一番速いモデルなのだ。