茶の湯を通して人と人をつなぐ
人と人との間を取り持つことに才を発揮した織田長益(有楽斎)。その取り持ちの場として大切にしたのが茶席だ。
織田長益は秀吉に仕えていた頃に剃髪し、「有楽斎」と号し、茶の湯を重んじた。茶を通して築いた交友関係の広さは、展覧会に出品された数々の書状や『有楽亭茶湯日記』などの茶会記に明らか。細川忠興、伊達政宗、徳川家康などの武将や、金地院崇伝をはじめとする高僧、古田織部や千道安(千利休の長男)といった茶人や商人など、様々な立場の人々と交流があった事実を知ることができる。
これらの書状から、有楽斎の人柄が見えてくる。「本年の茶葉は出来が悪いが、すぐに詰めて贈るので、あなたの台所茶にでもしてください」(『織田有楽斎書状 伊勢屋道七宛』より)、「方々から茶の誘いがあるが、いずれも同心はしないが、あなたのところへは参ろうと思う。秘密になさって、通りかかった風でうかがいます」(『織田有楽斎書状 東心老宛』より)。相手を気遣いながら、決して堅苦しくなく、ユーモアを交えてメッセージを伝える。有楽斎は穏やかで気配り上手な人物だったのではないか。