設立から30周年を迎えた三の丸尚蔵館が「皇居三の丸尚蔵館」としてリニューアルオープン。開館を記念した「皇室のみやび─受け継ぐ美─」展が開幕した

文=川岸 徹 撮影=JBpress autograph編集部

「皇室のみやび─受け継ぐ美─」展示風景

皇室コレクションの歴史

 古くから日本の皇室は文化的所産を蒐集・蓄積し、芸術文化の振興に重要な役割を果たしてきた。代表例を挙げると、奈良時代に光明皇后が聖武天皇の遺愛の品を東大寺大仏に献納した正倉院宝物。平安時代では、宇多法皇の仁和寺宝蔵、鳥羽法皇の勝光明院宝蔵、後白河法皇の蓮華王院宝蔵。江戸時代には皇室伝来の歴史資料類が戦乱や天災で失われることを憂慮した後西天皇によって膨大な写本・副本を作成され、これらは東山御文庫の礎となり現在まで伝えられている。

 こうした皇室コレクションは宮内庁書陵部や正倉院事務所、東京国立博物館などに保管され、国民への公開や研究活用などに用いられてきた。さらに1989(平成元)年には上皇陛下と香淳皇后が約6000点に及ぶ美術工芸品を国に寄贈。宮内庁の所管となったことを契機に「三の丸尚蔵館」が設立され、1993(平成5)年には一般公開が開始された。

 平安時代書跡の名品である小野道風《屏風土代》、鎌倉初期に藤原定家が書写した《更科日記》、狩野永徳による《唐獅子図屏風》、そして伊藤若冲の代表作《動植綵絵》。日本近代美術史を語る上で欠かせない名品の数々が、三の丸尚蔵館の誕生によって鑑賞する機会が増加し、広く国民の文化財になったといえる。

 三の丸尚蔵館の開設から30年を迎えた2023年。皇室コレクションの収蔵能力を高め、作品の公開活用をさらに充実させるため、新たな施設の建設が進められている。2023年(令和5)11月には三の丸尚蔵館は「皇居三の丸尚蔵館」として一部開館し、2026年(令和8)に全館開館を予定している。今回開館した建物は、地下1階・地上3階建て。地上1階にふたつの展示室が設けられ、2・3階には温湿度管理に優れた収蔵庫が設置されている。