名品がずらり!開館記念展へ
2023年11月3日に開館した皇居三の丸尚蔵館。これに合わせて、開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」がスタートした。展覧会では国宝6件を含む多種多様な収蔵品を公開。会期は4期に分かれており、第1期「三の丸尚蔵館の国宝」(11月3日〜12月24日)、第2期「近代皇室を彩る技と美」(2024年1月4日〜3月3日)、第3期「近世の御所を飾った品々」(2024年3月12日〜5月12日)、第4期「三の丸尚蔵館の名品」(2024年5月21日〜6月23日)。約8カ月にわたって、皇室に受け継がれてきた「美」を堪能することができる。
さっそく展覧会のトップを飾る第1期「三の丸尚蔵館の国宝」を鑑賞。タイトル通り、展示されている作品はいずれも国宝。国宝《屏風土代》小野道風、国宝《春日権現験記絵》高階隆兼(本作を収めていた国宝《藤折枝蒔絵箱》も合わせて展示)、国宝《蒙古襲来絵詞》後巻、国宝《動植綵絵》伊藤若冲の4件の国宝がずらりと並ぶ様子はまさに壮観だ。
いずれも甲乙付け難い名品ばかり。すべて国宝なのだから当然だが、じっくりと向き合ううちにあっという間に時間が経っていく。国宝《屏風土代》は和様の創始者といわれる小野道風35歳の作。書に深い造詣がなくても、「書って、なんかいいな」と思わせてくれる名品だ。道風特有のあたたかみのある書風と、随所に書き込まれた推敲の跡に親しみが湧いてくる。
元寇の様子を記した国宝《蒙古襲来絵詞》、奈良・春日大社に伝わる不思議な出来事を絵と詞書によって語る国宝《春日権現験記絵》はともに鎌倉時代の作。細部の緻密な描写がリアル感を醸し出している。
若冲の最高傑作《動植綵絵》
そしてハイライトといえるのが、伊藤若冲の国宝《動植綵絵》。多種多様な動植物が三十幅にわたって描かれた本作は、もともと若冲が帰依した京都・相国寺のために描かれたもの。若冲は「名声のために描いたのではありません。寺の荘厳をたすけ、永久に伝わってほしい」と作品に附属した寄進状に記している。本作は1889(明治22)年に相国寺から皇室に献上されたが、その際の下賜金によって相国寺は人手に渡っていた寺地を買い戻すことができたという。
そんなエピソードも素敵だが、何より出来ばえが素晴らしい。従来の花鳥画とは異なる大胆な構図、驚くほど細かく描き込まれた細部の表現。若冲には代表作といわれる作品が多いが、「やはりこれが最高傑作だ」と言いたくなる。会期中には三十幅のうち、展示替えを行いながら十二幅(1期に八幅、4期に四幅)が公開される。
展覧会の後は皇居をぶらりと散策してみるといい。「皇居東御苑」と「皇居外苑」は予約なしで見学が可能。自然豊かな“都心のオアシス”をゆっくりと歩きながら、美術鑑賞の心地いい余韻に浸りたい。