文・撮影=酒井政人

2024年1月2日、往路優勝し笑顔を見せる青学大、左から原晋監督、1区・荒巻朋熙、2区・黒田朝日、3区・太田蒼生、4区・佐藤一世、5区・若林宏樹 写真=スポニチ/アフロ

 太田蒼生(3年)と黒田朝日(2年)。今年の箱根駅伝は青学大のWエースが度肝を抜く爆走を披露した。彼らの「強さ」は、アディダスの『ADIZERO ADIOS PRO EVO 1』 という〝スーパーシューズ〟のアシストだけではない。

 2人は独自のメンタル術を持っており、本番で自分の持ち味をいかんなく発揮した。

 

狙ったレースで120%の力を出せる太田蒼生

 太田は最もアオガクらしい選手といえるだろう。明るくて、ノリが良くて、注目を浴びる舞台ほど、燃え上がる。箱根駅伝のピーキングがうまい青学大のなかでも、その能力は突出している。

 3区太田は抜群のスピードを持つ駒大・佐藤圭汰(2年)を追いかけて、5㎞を13分51秒、10㎞を27分26秒で通過。これはトラックの自己ベスト(10000m28分20秒63)を大きく上回るタイムだ。

「あまり深く考えていませんでしたね。なるようにしかならないですから」と笑い飛ばしたが、箱根駅伝という舞台では、スピードキングに負けない自信を持っていた。

「一年に1回。ここに合わせて調整しているので100%。いや120%を狙って出せたかなと思います。佐藤選手には(箱根駅伝の)経験の差で勝てたかなという部分がある。レース戦略と状況判断もうまくきましたね」

 太田は21.4㎞を59分47秒で走破。この記録はハーフマラソンに換算すると58分56秒ほど。下り基調のコースとはいえ日本記録(1時間00分00秒)を大きく上回るものだ。

 このパフォーマンスは、「素直に化け物だなと思います」と黒田が表現するほどだった。

 1年時は3区で区間歴代3位(当時)、2年時は4区で同3位。太田は箱根駅伝で3年連続して快走したことになる。1・2年時は出雲と全日本の出場はなく、昨年は全日本7区を区間5位と好走しているとはいえ、箱根駅伝では毎年、異次元の走りを見せてきた。

 なぜ、このような離れ業が可能なのか。太田の言い分は実に面白い。

「もちろん調整はしていますし、一発狙っていますよ。でも一番大きいのは、モチベーションだと思いますね。箱根駅伝で活躍したという気持ちもありますし、凄く楽しみだな、という部分が大きいんです。だから世界陸上とかオリンピックの方が箱根よりもいいパフォーマンスができると思います。気分が爆上がりしますから」

 目立ちたがり屋のお祭り男。それが太田蒼生の「強さ」になっているようだ。では、どのように調子を上げているのか。もしくはゲン担ぎや、ルーティンはあるのか。太田は意外な答えを口にした。

「どちらかというと、『特別なことをしない』ことを大切にしています。試合前になると、いろいろやろうと考えている選手が多いと思うんですけど、僕は逆ですね。普段から振れ幅が大きくならないように心がけています」

 レース前日、元日夜の食事も「王将でバカ食いしました」と明かす。餃子定食を頼んだだけでなく、チャーハン、唐揚げ、肉野野菜炒めなどをチームメイトとシェアしたという。これも太田にとっての〝日常〟なのだ。