花の2区で区間賞に輝いた黒田朝日
黒田も太田と同じタイミングでEVO 1を受け取ると、まずは軽さに驚かされたという。
「最初の印象はやはり軽さですね。出雲と全日本はADIZERO TAKUMI SEN 9を履いたんですけど、それと比べても軽いのかなと感じました」
TAKUMI SEN 9の靴底はヒール33 ㎜、前足部27㎜で、27 ㎝の片足重量が180g。より厚底になるEVO 1(ヒール39 ㎜、前足部33 ㎜)の方が42gも軽いのだ。
黒田もインフルエンザ明けだったこともあり、最初に履いたポイント練習の感覚は良くなかったという。それでも箱根前のポイント練習で2回使用したことで、EVO 1の威力を感じていた。
「TAKUMI SEN 9とは系統が違うので、別物という感覚でした。ただクッション性と反発力はこれまでに履いてきたシューズのなかで突出しているのかなと思います。でも本番はどうしようかな、という気持ちでした」
最高峰モデルの使用を悩んでいた黒田だが、「俺はEVO 1でいくよ!」という太田の言葉に背中を押された。
「せっかくだし、僕も箱根で履いてみようかなと思いました。履くなら、覚悟を持ってやろう、と。そこからは迷わずにいくことができました」
初めての箱根駅伝、黒田はEVO 1を着用して鶴見中継所に立った。最初に駒大・鈴木芽吹(4年)が飛び出すと、35秒差の9位で走り出す。腕時計をしない黒田は自分のリズムで刻んでいった。
鈴木は10㎞を28分09秒で通過して、権太坂(15.2㎞地点)の通過タイムは個人トップ。一方の黒田は権太坂の通過タイムが個人7位で、駒大との差を1分05秒に広げられていた。
「沿道から『前と1分差だよ』という声が聞こえてきたときは、優勝はちょっと無理そうだな、と一瞬思ったんです。でも権太坂の上りくらいから、自分のなかで動きが良くなったというか、上がってきた感覚がありました。その後は、タイムや順位の意識はあまりなくなって、本当に自分の走りに集中できたのかなと思います」
黒田は後半が強かった。歴代のエースたちを苦しめてきた〝戸塚の坂〟で駒大・鈴木に急接近。最後は13秒まで詰め寄り、区間歴代4位の1時間06分07秒で区間賞に輝いた。
「結果として前半から自分の思い描いたようなペースで走れたことと、後半に上げられたのが大きかったのかなと思いますね。ラスト3㎞を切ってから駒大が見えてきたので、1秒でも縮めたいという気持ちだけで走りました。終盤まで余力を残して走れたのは、シューズの恩恵があったのかなと思いますし、反発力は凄く感じました」
10000m27分30秒前後のタイムを持つトリプルエースを1~3区に配置した駒大に対して、青学大は10000m28分15秒82の黒田と同28分20秒63の太田で逆転に成功。女子マラソンで驚異的なタイムをもたらした〝世界新モデル〟のEVO 1が箱根路でも圧倒的な攻撃力を発揮したかたちになった。