天之鈿女命が祀られている椿岸神社へ

椿岸神社

 お参りを終えたら、向かって右側にある椿岸神社へ。こちらには猿田彦大神の奥様である天之鈿女命が祀られている。話を天孫降臨に戻そう。実は天之鈿女命は天照大神に「あなたはか弱い女の身でありながら気おくれしないから、あの鼻の大きな恐ろしい神の名を尋ねてきなさい」と命じられて猿田彦大神の元に向かったのであった。

 ここで思い出されるのは、この女神が、天岩戸から天照大神を引っ張り出すために、胸乳もあらわに滑稽な踊りを披露したエピソードである。天照大神はそんな彼女の豪胆さを見込んで派遣し、ここでも面目躍如。天之鈿女命はまたしても半裸で踊りながら、あざ笑うかのように「名を名乗れ」と声をかけた。猿田彦大神は度肝を抜かれ、セクシーで肝っ玉が座った天之鈿女命に一目惚れしたのだろう。無事瓊々杵尊を送り届けた後、「今度はお前が俺を送ってくれ」と言って故郷に連れ帰り、そのまま結婚してしまったのだ。

 鼻が大きくどことなくユーモラスな気のいい巨人と、色っぽくしっかり者で踊りのうまい美女。この夫婦はビジュアルを想像するだけでも微笑ましい。ということで、こちらの宮は、縁結び、夫婦円満、芸能上達などを願う人々に人気がある。

 朱を多用したどこか艶めかしいお社の隣には、この神社でも最高のパワースポット「かなえ滝」もある。見た目は人工の小さな滝ではあるが、向かい合うとマイナスイオンが降り注いているように感じられる。水を汲むこともできるし、滝の写真をスマートフォンの待ち受けにすると願いごとが叶うとも言われている。

かなえ滝

 その脇には龍蛇神両地神社という、これもまたパワーが強そうな名前の摂社もある。火難・水難除け、土地災難除けの守護神ということなので、日本にこれ以上、水害や地震など大きな災害が起きませんようにとお願いしよう。

 林の中の小道をさらに歩くと、珍しい神を祀る摂社がある。なんと松下幸之助社だ。あれだけの功績がある方なのだから、現代の人物であっても神として祀られるのは納得できる。松下幸之助氏はこの神社が大好きで何度も通われたそうだ。あのような方を惹きつけるほどパワーがすごいということだろう。

茶室門

 傍らには松下さんが寄贈された茶室「鈴松庵」もある。松下さんはこちらの広い境内を隅々まで歩き、この場所が一番気に入って茶室を建てた。そして、より多くの人がこの神社内でよい時間を過ごせるようにと、一般の参拝者にも開放してくださったのだ。

 椿大神社と松下幸之助氏の大ファンだという地元の女性に点てていただいたお抹茶と一緒に、地元の老舗和菓子屋さんから届いた上品なお菓子をいただく。願いごとはまだまだたくさんあるけれど、まずは、この神社にお参りに来るという願いが叶って幸せだった。