交流し学び合い成長する村

 現在は第5次総合計画のもとで動いているという。そこには基本理念としてこう掲げている。

「多様であることから、交流し学び合い成長する村」

 国内はもとより海外からも多くの観光客が集まり、魅力にひかれて移住者も増えている白馬村の今後をどう考えているのか。

「まず与えられている期間を全力でやろうと思っています。日々それに一生懸命です。10年先、20年先、30年先の白馬を考えた上での行動をするということは当然です。でもそのときに首長かどうかというのは全然別の話です」

 10年、20年、30年先を考えたとき、何を大切にするべきなのか。丸山は答える。「やっぱりこの自然環境ですね」

 そして村長になる前から意識してきたという持続可能な観光地であることに取り組む。

 今年6月、観光庁による今年度の「持続可能な観光推進モデル事業」に自治体として唯一、選ばれた。「持続可能な観光地経営の促進と宿泊事業者の環境対策の加速化」を事業名とする。

「持続可能な指標に基づいた観光地経営計画の策定、新たな観光財源、環境への取り組みなどを想定しています」

 さらに10月には、世界からの評価が加わった。国連世界観光機関が持続可能性を持つ優れた観光地を認証する「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」の制度がある。その認証を受けたのである。

 丸山は10月19日、ウズベキスタンで行われた国連世界観光機関の定期総会に赴き、認定証を受け取った。

「この自然環境や景観が評価されたことはもちろんあります。加えて、登山の文化があって農業が産業として古くからあったところにスキー文化がつくられ、民宿発祥の地でもある民宿文化、里山文化みたいなところを打ち出しました。特に世界的に見ても希少な景観と家庭的なおもてなしとを組み合わせてやってきて点はポイントになったかなと思います」

 コロナ禍の影響で4年ぶりに本格的に開催され、世界中から多くの人が集う中で、白馬を知らしめる機会ともなった。

「今回、日本から4つが受賞しましたが、行くことができたのは白馬村だけなのでプロモーションという意味でも効果がありましたし、世界のツーリズムが持続可能な方向を向きましょうと啓発していく制度における認証を受けたことで、普及側にまわることもできます。今後もたくさんの観光地が認証を受けていくと思いますが、増えていくことで、特に温暖化など環境を守ることにつながっていくと思います。我々は特に環境の恩恵によって成り立っている村なので、世界としてサステナブルなツーリズムの方向に向かうということは非常にうれしいことです」

 そしてこう続ける。

「これまで世界水準のオールシーズンマウンテンリゾートであるとか、持続可能な観光地経営を目指して取り組んできたんですけれども、今回まさに世界水準の認証をいただけたので、住民もそうだし、新しく移住や投資しようとする人、観光客、白馬に携わる人々が白馬の魅力を理解し、その資源に対して敬意をもって大切にしていく。その契機でもあります。そういう意味で私たちの世界は大きく変わっていくと思います」

  村役場の玄関前にいた丸山をみつけた低学年だろうか、小学生の女の子が「やっほー」と声をかけた。丸山は穏やかな笑顔で返した。それは丸山の村での立ち位置を示しているようだった。

 いつまでも続く魅力ある観光地として、より人々を惹きつける観光地としての未来へと、丸山俊郎は行動し続ける。

丸山俊郎(まるやまととしろう)白馬村長。1974年、長野県白馬村生まれ。日本大学商学部経営学科卒。株式会社オリエンタルランドなどに勤務し家業の「しろうま荘」支配人に。2012年に「ワールド・ラグジュアリー・ホテルアワード スキーリゾート」世界一を受賞したのをはじめ数々の国際的な賞を受賞。一方で白馬高校非常勤特別講師担当、「白馬国際トレイルラン」創設に携わるなど多角的に活動。2022年、白馬村長に就任。