文=松原孝臣 写真=積紫乃

今始めないと手遅れになってしまう

「崖から飛び降りる覚悟って、こういうことを言うんだなと思いました」

 長野県白馬村長の丸山俊郎は笑う。

 村長選への立候補を決意したときを振り返っての言葉は、自身にとって大きな決断であったことを示している。

 直接の大きなきっかけは2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大にあった。緊急事態宣言が発令されたのをはじめ、対策が打ち出された。

 それは社会に大きな影響を与えた。とりわけ、国境を越えての行き来を中心に人の動きが止まることは観光業界にとって大きなダメージをもたらした。そして白馬もまた、観光産業を中心としている自治体だ。

「自分の宿をやっていれば、それなりにお客さんも来ますし、コロナ禍でも経営的に非常に悪かったわけではなかったので、自分の宿のことだけを考えればそのままでも十分経営していけたと思います。ただ、日本自体のコロナ禍での対応も遅れていてどうかと思いましたし、白馬はやはり観光産業があってこそです。自分の人生を懸けてやることによって打開できる可能性を感じました」

 白馬の現状や今後を考えれば、行動せずにはいられなかった。

「あとはやっぱり若いうちじゃないと動けないという思いもありました。実際に村長になってみてからも思いますけど、とにかく体力があるないでできる量が全然変わるし、脳の柔らかさという点で言っても更に歳を重ねるとどうなんだろうと思いました。今始めないとちょっと手遅れになってしまうのではないかと感じましたね」

 行政経験はなかった。でもそれ以上に行動力があることの方が大事だと思ったという。

「村長になる上では、経営的な判断力と、それを実行に移す行動力があることが住民利益に資すると思っていました」

 さまざまな活動に携わってきた経験も根拠となっていた。

「例えば白馬高校に存続の危機があったとき、非常勤講師として携わり、『観光英語』という授業を立ち上げました。その後国際観光科が新設され、全国から生徒が来るようになって存続できました。あるいは村で2015年に制定したマナー条例に関して村と大使館とつないだり、村の観光やスポーツイベントでは長くMCを務め、企画にも携わったりと、今までも行政の人たちと一緒に行ってきた活動は数多くありました」