当初より前倒しで水際対策が緩和

 2022年7月10日に当選し村長となると、抱いていた課題への取り組みを始めた。1つは水際対策の緩和への働きかけだった。諸外国は徐々に緩和することで人の行き来を取り戻していっているにもかかわらず日本は遅れていると思った。いたずらに長引けば、白馬の回復も図ることはかなわない。何よりも冬場のインバウンドの予約は夏から秋にかけて入る。このままの状態が続けば、客を失うことになりかねなかった。一度行き先を変えた旅行者は、そのまま戻ってこないことも考えられた。

「もちろんコロナは今までにないものだし、感染症ですからきちんと対策をしなければいけないんですけれども、(当選後の)8月になっても『先が見えない』という趣旨を言ってるんですね。観光庁とはもともとつながりがあったので長官のところに行ってお話をしました」

 話をする中で次の行動のヒントを得ると、丸山は長野県の阿部守一知事に「知事会としても課題共有してほしい」とお願いをした。その後もつてをたどって各所に働きかけ、同じタイミングで県内や近隣県のスノーリゾート産業関係者も多く動いた。

 それは1つの成果となった。2022年9月、当初より前倒しで水際対策が緩和されることになった。

「実際にこうやって活動するとほんとうに動くんだと感じました」

 一方で対策をとることも怠らなかった。

「冬になる前に白馬の医療機関、検査資格事業者、飲食事業者などを全部集めてミーティングをして対策を図りました。また、感染が広がりやすいところに対しては注意喚起とともに職員と歩いて検査キットを配って歩きました。感染症対策のムービーを作り、英語表記をして長野から白馬に来るバスの中やケーブルテレビで毎朝観ることができるようにもして、マナー条例に加え感染症対策についても啓発しました」

 2022年10月には阿部知事、野沢温泉村長、山ノ内町長とともにオーストラリアに出向くと、オーストラリアに培っていた関係もいかし、トップセールスを敢行している。

 スノーリゾートの町から、国の政策にインパクトを与える働きかけをし、海外に赴いてトップセールスを行うなど、広い視野と行動力をもって独自の取り組みを実践してきた。それはコロナの打撃から回復し再び多くの観光客を呼び込む今日へとつながっている。

 そして丸山は、白馬の将来をも見据えた活動も進めている。(続く)

 

丸山俊郎(まるやまととしろう)白馬村長。1974年、長野県白馬村生まれ。日本大学商学部経営学科卒。株式会社オリエンタルランドなどに勤務し家業の「しろうま荘」支配人に。2012年に「ワールド・ラグジュアリー・ホテルアワード スキーリゾート」世界一を受賞したのをはじめ数々の国際的な賞を受賞。一方で白馬高校非常勤特別講師担当、「白馬国際トレイルラン」創設に携わるなど多角的に活動。2022年、白馬村長に就任。