注目の作品はまだまだ尽きない

展示風景より、落合朗風《エバ》(部分)1919年 山種美術館

 山下裕二氏が「個人的に大好き」という作品が 落合朗風《エバ》(山種美術館)。川端龍子と並び賞される技量の持ち主だったが、40歳の若さで生涯の幕を閉じてしまった。

「《エバ》は大正8年の作で、院展に出品され、横山大観を感嘆させたと言われています。この絵は、とても奇妙で幻想的。アンリ・ルソーの《夢》という作品を思い出させます。植物の表現方法など通じる部分が多いので、きっと朗風自身もアンリ・ルソーの図版を見ていたんじゃないでしょうか」

 ほかにも「注目すべき作品は尽きない」と山下氏。「ゴーガンからの影響を感じる土田麦僊《大原女》、ヨセミテ渓谷を題材にした横山操《滝》、エアブラシによる表現が新しい千住博《ザ・フォールズ》。明治から昭和、そして現代まで、画家たちは伝統と向き合いながら、その枠を超える表現に挑みました。みずみずしいパワーにあふれた本展は、夏に見るのにちょうどいいかもしれませんね」

展示風景より、手前から、千住博《ザ・フォールズ》1995年 山種美術館、並木秀俊《白鳳》2023年 個人蔵

 展覧会では、昭和45年に設立された山種美術館賞の受賞作品も紹介している。山種美術館賞は若手画家の支援を目的に設立された登竜門的な賞で、受賞後に目覚ましい活躍を見せている作家が多い。日本画壇を代表する画家となった松尾敏男、竹内浩一、岡村桂三郎らのエネルギーあふれる受賞作品も合わせて鑑賞したい。