シンプル・イズ・ベストな好印象スーチングは妻ブリジットのおかげ!?

写真=AP/アフロ

 2022年3月11日、パリ西部のヴェルサイユ宮殿でのEU首脳会議後の記者会見に臨むため、マクロン大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と言葉を交わしながら歩みを進める。記者会見では、EUはキエフへの軍事支援を強化する一方、ウクライナ侵攻でロシアを罰する新たな制裁を策定し、ロシアへの圧力を継続すると発表した。

「スーツスタイルの中で最も潔くシンプルなコーディネート、それはネイビースーツ×白シャツ×ネイビー無地タイの組み合わせですが、実は結構難しい点もあるんです。シンプルがゆえに、サイズ感、スーツとネクタイの色、シャツの襟型などに気を付けないとスマートにならないのです。このマクロン大統領のスーツ姿を見ると、すべてうまくまとまっています。

 スーツのサイズ感、パンツの丈まで良い具合で、スーツとネクタイの色がほぼ同色なのも好印象。シャツの襟型がセミワイドで、靴は黒のストレートチップといったところもコーディネートを邪魔していません。ブリジット夫人のアドバイスがあるのかもしれませんが、マクロン大統領のスーツの着こなしは、各国の大統領の中でも一二を争うんじゃないでしょうか。トレビアン!」


 2017年、第25代フランス共和国大統領に就任したエマニュエル・マクロン氏。閣僚になる前は投資銀行の銀行員だったマクロン氏は、39歳という史上最年少でフランス政権のトップになった。若さと整ったルックス、24歳年上のブリジット夫人との生活など、特異なプロフィールも注目を集めた。

 その大統領就任式では、350ユーロ(約5万2400円)ほどの既製服だったことも、ニュースとして取り上げられた。選挙戦期間中、中道右派の対立候補者のスーツがパリの老舗テーラーで何万ユーロもするオーダーメイドだったことと比べると差は歴然。庶民的な感覚を持つマクロン氏への好感度はさらにアップしたが、その陰にはマクロン氏が15歳の時に演劇部の顧問だった妻ブリジットの“指導”があることがうかがえる。

 2022年には急進右派・国民連合のマリーヌ・ルペン候補を下して再選を決め、45歳になった今も体のラインは緩んでおらず、高価でスタイリッシュなスーツでなくとも十分な見栄えだが、年を重ねていきどのような着こなしになっていくのか注目したい。

 

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。