東京・アーティゾン美術館にて「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」が開幕。国内外から厳選された263点の抽象絵画が公開される。

文=川岸 徹 写真=JBpress autograph編集部

ヴァシリー・カンディンスキー《自らが輝く》1924年 石橋財団アーティゾン美術館

抽象絵画は感覚重視で楽しもう

 美術史を理解するうえで、避けては通れない抽象絵画。だが、「抽象絵画は難しく、どう見ればいいのかわからない」と、鑑賞前から頭を抱えてしまっている人も多いのでは。

 抽象絵画は「作品に描かれた形象が具体的であれば具象絵画で、そうでなければ抽象絵画」と定義されることもあるが、そんな簡単にはっきりと分けられるものではない。人物や風景をモチーフにしながらも抽象表現を用いた作品はたくさんあるし、空想のイメージを描きながらも現実世界のようなリアル感をもつ作品もある。

 だからこそ、抽象絵画を鑑賞するときには難しく考え過ぎずに、「なんかこれ、いいよね」「なぜか刺さるんだよね」くらいの感覚重視で見る意識を大切にしたい。お気に入り作品を少しずつ増やしていくことで、抽象絵画がおのずと身近なものになってくる。

 まずは自分の好みを探るためにも数を見ること。その「場」として、6月3日にアーティゾン美術館で開幕した「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」をおすすめしたい。

 この展覧会はアーティゾン美術館の全展示室を使った大規模企画展で、同館の新収蔵作品95点を含む約150点の石橋財団コレクションに、国内外の美術館や個人コレクションからの作品を合わせた263点を公開。数が多いばかりでなく、1点1点のクオリティがとても高い。抽象絵画の流れをつかみながら、自分の1枚を探す最高の機会だ。