抽象絵画の原点は印象派!?

 展覧会の冒頭を飾るのがポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。セザンヌは印象派を代表する画家として知られているが、目にした風景をそのまま忠実に描くのではなく、頭の中で再構成してカンヴァス上に展開した。この作品でも樹木の群生がひとかたまりの面となって表現され、黄土色の建物は幾何学的な立方体で表されている。そんな革新性は、抽象絵画が生まれる源泉になった。展覧会の幕開けにふさわしい1枚だ。

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃 石橋財団アーティゾン美術館

 1906年のセザンヌの死とほぼ同時に興った美術運動がフォーヴィスムとキュビスム。マティスやアンドレ・ドラン、モーリス・ド・ヴラマンクらフォーヴィスムの画家たちは感覚を重視し、目に映る色彩よりも心が感じる色彩を大切にした。

 そんなフォーヴィスムの特徴が、アンドレ・ドラン《女の頭部》に強く表れている。ドランは多様な色を用いて女性の顔を表現。青や緑など肖像画ではあまり用いられない色が多いが、それでいて奇異な印象は受けず、全体のまとまりがいい。ドランのバランス感覚とセンスの良さを味わえる名品といえる。

アンドレ・ドラン《女の頭部》1905年頃 石橋財団アーティゾン美術館

 一方のキュビスムは、フォーヴィスムとは対照的に抑圧された色彩と単純化された形体が特徴。キュビスムの画家として広く知られているジョルジュ・ブラックとパブロ・ピカソのほか、ジャン・メッツァンジェ、フアン・グリスらの作品が並ぶ。