文=松原孝臣 写真=積紫乃
カナダに渡りトライアウト
高校1年生の夏休み、高橋成美はコンタクトをとった。相手は若松詩子だった。若松はカナダに渡り、当地でカナダの選手とともにペアで活躍していた。
「夢をあきらめる前に、一度だけ、最後の一度だけカナダ人でもいいからトライアウトという形でペアをやってみて、もし合ったらそのとき考えて、合わなかったらもうあきらめようという気持ちでした」
コンタクトののち、カナダに渡りトライアウトをした。その相手はマーヴィン・トランであった。
それは大きな出会いとなった。ペアとして2011-2012シーズンまでともに活動し、数々の輝かしい実績を残すパートナーとなったからだ。
「すごく相性がよくて、何でもできちゃったので、一回ペアで夢を目指してみようという感じになりました」
相性について、こう説明する。
「具体的な例であげると、これまでヨーロッパの選手と一度組んだことがあります。私に対して腕が長すぎて、上に行くまでの時間が長かったり、ちまちま動く私には合わなかったですね。シングルスケーターのスケーティングを見てもそうなんですけど、日本人って腰を低くして安定したスケートをするのに対し、ヨーロッパの選手は腰を高く保ったまま軽い感じでスケートするんですね。そうするとほんとうにデコボコでリズムが合わなかったり。
特に膝のリズムですね。膝のリズムが合うとスケーティングだけじゃなくジャンプするにしてもスロージャンプ、リフトもやりやすかったりします。また、足が長すぎてもリフトするときに女の子が上まで高く飛び上がらないといけないけれど、正直、足が短いとちょっとしゃがむだけでけっこう下に来るので飛びやすかったり。細かい面で言うとこのような感じですが、スケートをやっている人だったらすぐ感じられると思います」
カナダのモントリオールに渡り、2年生から高校もカナダへ。
「ケベック州には『スポーティチュード』という、スポーツを一生懸命やっている生徒のために特別に補習枠があったり、昼休みより前だけ、昼休みより後だけ通ってもいいみたいな制度があるんですね。カナダに行って学業とスケートの両立が楽になりました」
取り巻く空気も異なっていた。
「日本でもみんな応援はしてくれていました。ただ、早退とか遅刻をすればどうしても『なるちゃんだけずるい』とか、スケートなんかして、という先生もいました。カナダだともう学校が応援してくれているみたいな感じがあって、海外の試合から帰ってくると、みんなが『おめでとう』と言ってくれる感じでした」