パイクは当時の先端技術を使って活動を展開したが、人間の肉体の表現にこだわった。この作品でも「TVブラ」と称するモニター付きブラを着用したほとんど裸体の女性チェリストに坂本がインタビューしていたり、胸を露わにシャワーを浴びている女性がテレビ画面に大きく映し出される坂本を見ていたりする場面がある。

 文明の暴力による破壊と、それに対比される肉体の存在。これをショッキングに描き出すのがパイクの手法だ。

 ちなみにパイクは「機械の人間化」という言葉を用いたが、それはつまりはロボットを動かすことではなく、機械を肉体化させる試みだったと私は思っている。パイクの肉体とエロスへの執着と愛着は、その作品を見ているとよくわかる。

パイクから坂本へ、坂本からK-POPへ

 坂本は翌年に『TV WAR』や『Adelie Penguin』という映像作品を制作している。これらはパイクの手法を彷彿とさせるが、パイク作品ような強烈なエロスは封印されている。