坂本の作品といえば、個人的には中谷美紀の『砂の果実』『Strange Paradise』や中森明菜の『Everlasting Love/NOT CRAZY TO ME』など、ちょっと危ない感じのする楽曲が好きだ。これらはどれも、テクノ的な音が人工的な都会を連想させながらも、そのなかで暮らす人間のしっとりとした肌身の感覚(Sense)を赤裸々に浮かび上がらせている。

 人間の肉体は文明化(機械化)できず、原初的な魂を抱え込んで生きている。その点では、穏やかに官能的(Sensible)であり、つまりはセクシーなのだ。

ナム・ジュン・パイクと坂本龍一の関わり

 坂本龍一の訃報は韓国でも報じられた。音楽的に影響を受けて交流もあったK-POPグループ「BTS」のメンバーSUGAが「はるかなる旅路が安らかでありますように」と哀悼の意を表しているほか、坂本とK-POP界の幅広いつながりを伝える報道も見られる。

 坂本龍一と韓国の関わりというと、私としては若き坂本とナム・ジュン・パイク(1932~2006年)との出会いを語らずにはいられない。