そうした坂本の意図について私は知らない。だが確実に言えるのは、これによって多くの大衆に受け入れやすくなったという点だろう。本人は「狙っているわけではない」と話しているが、人工的なものと対比される肌身の感覚は、自ずとセクシーな温もりを持ち、それゆえ癒しを感じさせる。
坂本と韓国は、その意味で不思議な循環の縁をもつ。パイクは日本から影響を受け、後に坂本に影響を与えた。そしてその坂本は今度はK-POPにも影響を与えたのだ。しかも人工的な音のなかに立ち上がるセクシーさは、今のK-POPそのものではないか。
特にK-POPの場合は、西洋音楽の土壌にアフリカのヒップポップ、さらには韓国的なリズム感が融合されている。だから単なる物真似にならず、欧米の人々にも新鮮に聞こえるのだ。
「芸術は長く、人生は短し」との言葉を坂本は好んだようだが、その系譜は次の世代が引き継いでいくのだろう。これからも楽しみである。