オリジナル地酒「やましろ」
2006年に山代酒商組合のメンバーが発案してつくったオリジナル地酒「やましろ」も、軽やかな飲み口のとても美味しいお酒です。山代温泉にはかつて造り酒屋がありましたが、昭和30年代に廃業してしまい、山代の地酒がなくなってしまいました。「山代にふたたび地酒を」との思いから、組合では独自の酒造りに取り組みます。
まず水選びです。薬王院温泉寺の井戸水が軟水で酒造用に適した水質であることがわかり、仕込み水として当初は使用しました。九谷焼を思わせる緑色の瓶を選び、お酒の名前はみんなで検討して「純米酒やましろ」としました。ラベルの文字は薬王院温泉寺の当時の長老・堀井隆俊氏の揮毫によるものです。その縦書きの文字は一見、梵字のようにも見え、この地で五十音図をつくった明覚上人を思わせます。
お酒の醸造は鹿野酒造に依頼しました。当時、狩野酒造は能登杜氏四天王のひとりで「菊姫」の杜氏としても知られ、「酒造りの神様」と呼ばれている農口尚彦さんが杜氏でした。初めてのしぼり作業には組合のメンバーも立ち合い、堀井長老の読経のなか、圧搾器から新酒が流れ出し、30年ぶりに山代の地酒が復活したのでした。
当初、酒米の五百万石は白山市のものでしたが、翌年からお米も地元産にしようと、組合員の水田で育てることになったそうです。田植え祈願祭には組合員と狩野酒造の蔵人ら16人で田植えをしました。杜氏の農口さんは「理想に近くてともよくできた。米の旨さも感じられ、のど通りの良いキレのある酒になった」と語ったそうです。今では毎年、地元の子どもたちも親子で田植えに参加して、地元のお米からおいしいお酒ができることを、体験しているそうです。
「純米酒やましろ」は通常品の火入れ純米のほか、毎年9月には「ひやおろし」(限定400本)が、12月には「しぼりたて生原酒」(1000本限定)を発売。すべて720ml税込1545円というリーズナブルな値段も嬉しい、人気のお酒となっています。河畑さんが営む「Liquor Shopカワバタ」で地方発送もできます。加賀の美味しい料理と一緒に、ぜひお試しください。