文=福留亮司

『クロノマスター スポーツ』 自動巻き(Cal.エル・プリメロ 3600)、18Kローズゴールドケース、41㎜径、440万3300円

歴史あるブランドの強みは、往年の名作から範を取りつつ現代の技術やテイストを盛り込み、新しいモデルを生み出せることにある。ゼニスの新作は、まさにそういう時計だ。伝統を感じつつ機械式時計の進化も堪能したい。

高級スポーツウォッチと呼ぶに相応しい

 名機エル・プリメロの最新世代となるCal.エル・プリメロ 3600を搭載し、さらに往年の名作をベースにモダンにまとめられたデザインを有するなど、高級スポーツウォッチと呼ぶに相応しいモデルが『クロノマスター スポーツ』である。

 クロノマスターコレクションが誕生したのは1994年。基本的にエル・プリメロを搭載しており、そのメインラインとして、そして、ゼニスの中心的なコレクションとして親しまれてきた。

 そんなクロノマスターコレクションに『クロノマスター スポーツ』が加わったのが、2021年。ブラックセラミック製ベゼルにトリコロールインダイヤル、そしてケースと一体型となったシャープなブレスレット。どちらかというとクラシックな印象だった『クロノマスター』がモダナイズされたように感じられた。

 そして、なんといっても最新世代の「エル・プリメロ 3600」搭載である。冒頭に書いたように、名器の誉高い“エル・プリメロ”は、1969年1月に発表された自動巻きクロノグラフキャリバー。この年は、他の2社が同様のキャリバーを発表しており、自動巻きクロノグラフ元年となった。

 ただ、エル・プリメロは当初から36,000振動/時のハイビートを実現しており、機能、インパクトの面で一歩先んじていた。それは50年以上経った今日でも十分にスゴいと言えるものだ。その評価は、後に複数の名門ブランドの、しかもそこを代表する人気モデルに搭載されたということでも実証されている。

『クロノマスター スポーツ』にはその最新型が搭載されている。画期的なのは、クロノグラフ針が10秒で一回転するということ。そのためにベゼルにはタキメーターメモリではなく、10分の1秒が刻めるスケール表示になっている。それによって、1秒から0.1秒の計測を容易にしたのだ。

 しかも、従来のエル・プリメロが消費エネルギーの大きなハイビートで、約50時間というロングパワーリザーブを実現していたことにも驚きだが、「エル・プリメロ 3600」では、それを約60時間にまで延ばしているという。

ゴールド素材でよりラグジュアリーに

 そんな高性能キャリバーを載せつつ、ケース、ブレスレットの素材にゴールドを加え、よりラグジュアリー感を出したのが22年の新作『クロノマスター スポーツ』である。

 フルローズゴールドのモデルとローズゴールド×ステンレススティールケースの2型を紹介したい。前者にはブラック、ホワイトのダイヤルが用意され、ゴールドの針とアプライドインデックスを備える。インダイヤルはエル・プリメロのシグネチャーでもあるグレー、アンスラサイト、ブルーのトリコロール。ケースのローズゴールドにはサテン及びポリッシュの仕上げが施されており、立体感と上品さをつくりだしている。

アワーマーカー、針はゴールドプレート加工で、アワーマカーにはスーパールミノバが塗布されている

 一方、後者、ツートーンバージョンは、ケース、ラグ、ブレスレットのサイドリンクにステンレススティールを採用。ベゼル、リューズ、プッシュボタン、ブレスレットのセンターリンクがローズゴールドとなっている。ダイヤルはシルバーのサンレイパターン。そこにフルゴールド同様にトリコロールのインダイヤルが並ぶ。とても美しい組み合わせである。

ステンレススティール&18Kローズゴールドケース、41㎜径、198万円。サンレイ装飾のダイヤルには、9時位置にスモールセコンド、6時位置に60分カウンター、3時位置に60秒カウンターが並ぶ
 

 ゼニスCEOのジュリアン・トルナーレ氏は、発表に際してこう語っている。

「わずか1年で『クロノマスター スポーツ』はもっとも人気のあるモダンなクロノグラフウォッチのひとつになりました。同時に、高振動クロノグラフの独自のノウハウと特徴的なデザインを兼ね備えたゼニスの重要な柱にもなりました。今日『クロノマスター スポーツ』を新たな次元へと導く新バージョンと素材により、コレクションを拡大できることを嬉しく思っています」

『クロノマスター スポーツ』の歴史ははじまったばかり。今後、どのようなモデルが発表されるのか、楽しみである。 

 問い合わせ:LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL:03-3575-5861