文=福留亮司

『ビッグ・バン ウニコ ブロンズ』 自動巻き(Cal.HUB1280)、ブロンズケース、44㎜径、322万3000円(国内限定77本)

 毎年、多くのモデルをローンチするウブロ。今年もこれまでにない雰囲気のモデルが登場しており、いつもながら目が離せない新作発表となっている。

常識を覆した「アート・オブ・フュージョン」

  それまでにない素材を融合させたウブロのモデルは、ある意味、腕時計の常識を覆したと言えるだろう。ブランドコンセプトである「アート・オブ・フュージョン」は、異なる素材を融合させることで、腕時計におけるアイディアの範囲を大きく広げたのである。実際に加工技術やカラーバリエーションが増えたことなど、それはモデル自体に反映されている。アイディアを実行に移す早さも特筆すべきものがあったのだ。

 ウブロが創業したのは1980年。ご存知のように、スイス時計のトップブランドの多くは100年以上の歴史を持つところが多い。そんな中にあって、ウブロは現在でもまだ42年と、かなり若いブランドである。しかも、創業した時代が、クォーツ時計の台頭により、機械式時計中心のスイス時計メーカーが瀕死の状態に陥ってる最中であった。

 そうなると頼りになるのは、アイディアである。ウブロは、フランス語で舷窓を意味するブランド名そのままに、ビスを使用しデザインされた印象的なケースに、高級時計には装着されたことのないラバーストラップを組み合わせた腕時計を発表したのだ。

 とても斬新でクリエイティブなデザインのそれは、古い概念を打ち破る、新時代を予感させるものだった。

 そして、それを後押ししたのが、イタリアを中心としたファッション界だったというのも面白い。斬新なデザインが著名なデザイナーたちに認められ、世界へと発信していったのである。

先端素材と伝統の融合

 21世紀に入ると、鬼才ジャン-クロード・ビバーがCEOに就任し、“フュージョン”というコンセプトを打ち出した。現在の「アート・オブ・フュージョン」である。ゴールドやスティール、チタニウムといった素材に加え、セラミック、タンタルなど、これまで腕時計に使われたことのない先端素材を使い、伝統的な機械式時計の製作技術と融合させたモデルは、世界を驚かせた。以降、現在に至るまで、ウブロには最先端というイメージが焼き付いている。

風合いのあるブロンズケース

 そして、今年登場したのが『ビッグ・バン ウニコ ブロンズ』。ウブロが誇るクロノグラフムーブメント「ウニコ」を搭載しており、最先端なのは間違いないのだが、ブロンズケースに風合いのあるストラップという組み合わせは、ユニークでとても新鮮であった。

『ビッグ・バン』にブロンズの素材感がこれほどフィットするとは、新しい発見でもあるし、ヘビーデューティな雰囲気は新しさを感じさせてくれる。でも伝統的な時計製作を標榜するウブロにしてみれば、これも想定内のことなのかもしれないが。

 外装はレトロっぽいが、ダイヤルはスケルトン。現代的な要素もしっかりと盛り込まれており、そこから見えるのが、先に述べた搭載の「ウニコ」。自社開発のムーブメントは約72時間のパワーリザーブを誇る。

 ストラップは特許を取得した独自の「ワンクリックシステム」。簡単にストラップを着脱できるので、気分によって容易に交換することができる。この『ビッグ・バン ウニコ ブロンズ』には交換用にブラックラバーストラップが付属しているので、季節やファッションによって付け替えられるのも嬉しい。

ブラックラバーストラップを装着。着脱式「ワンクリックシステム」で、簡単にストラップが交換できる

 ウブロ=最先端という固定観念を持っていたのだが、この『ビッグ・バン ウニコ ブロンズ』で、「アート・オブ・フュージョン」の奥深さをあらためて思い知った。アイディアは無限の可能性を秘めている、と。

問い合わせ先:LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ TEL:03-5635-7055