文=福留亮司
イタリア海軍とともに発展したパネライの腕時計。そのなかでも本格派でダイバーズウォッチ然とした腕時計が『サブマーシブル』だ。今年は、独自開発の新素材を採用した新しく、画期的なモデルが登場している。
基準をクリアしなければ名乗れない
パイロットウォッチ、トラベルウォッチなど、腕時計のジャンルを区別する名称は結構あり、それを名乗るのは自由である。それが的外れな造形、機能でなければ、たいていの人は納得するだろう。唯一、ある基準をクリアしなければ名乗れないジャンルがある。それがダイバーズウォッチである。
ダイバーズウォッチは、国際的にはISO、日本ではJISによって定義づけられている。それは、水深100mの潜水に耐え、その1.25倍の水圧に耐える耐圧性など、多くの要求事項をクリアしたものに限られる。潜水中に故障するなどということは許されないからだ。人の生死に関わることだけに、厳しい基準の設定は当然のことである。
腕時計は過酷な状況下での使用により、スペックが強化されてきた歴史がある。その最たるものが戦争であり、ときに自動車レースだったりする。そこで耐久性や計時などが進化していったのだ。もちろん、防水性能も同様である。
イタリア海軍との関わりから腕時計の歴史がはじまったパネライのモデルは、どれもが高い実用性を持っている。なかでも、とくにダイバーズウォッチらしい容姿なのが『サブマーシブル』だ。1956年にエジプト海軍潜水特殊部隊用に製作された『エジツィアーノ』の系譜にあるこのモデルは、ドットが打たれた逆回転防止ベゼルや重厚感のあるケースが特徴となっている。
スタイリッシュでありながら本格派
新作の『サブマーシブル クアランタクワトロ eスティール™』にも、それらは継承されており、ベゼルやインデックスのドット、3時位置のデイト表示、9時位置のスモールセコンドの針、そして独自のリューズプロテクターなど、一目でパネライと認識できる意匠を持っている。もちろん、300mという高い防水性能も引き継がれており、スタイリッシュでありながら本格派のダイバーズウォッチとなっている。
深海まで耐えられるモデルだけに、暗所でも正確に時間が読み取れるように、インデックスや針、ベゼルの12時位置に夜光塗料が施されるなど、ダイバーズウォッチとしての機能にも抜かりはない。
搭載ムーブメントは、約3日間のパワーリザーブを誇るCal.P.900。これは薄型の『ルミノール ドゥエ』搭載のものと同じムーブメント。ハイレベルのスペックを持つダイバーズにもかかわらずケース厚が抑えられ、良好な装着感が得られるのは、このムーブメントによるところが大きいのである。
そして、この『サブマーシブル クアランタクワトロ eスティール™』でもっとも重要なのが、“eスティール™”というパネライ独自の新素材がケースに採用されていることだ。これは昨年パネライが開発したもので、100%スクラップ鉄をリサイクルして生成されている。これにより時計総重量の約60%を再生素材で構成することに成功した。
しかも科学的性質を含め、物理的構造、耐食性など、従来のスティールと同じ金属特性を備えているというのだ。さらには、装着されるファブリックストラップもリサイクルPET素材で、替えのストラップもリサイクルラバーということである。。
街で着用しても違和感のない、スタイリッシュかつ薄型のダイバーズウォッチは、廃棄物の削減と材料の再利用の促進を含む、持続可能な未来のための開発に取り組んでいるパネライにとって、とても重要なモデルなのである。
問い合わせ パネライ TEL:0120-18-7110