文=福留亮司
ヴァシュロン・コンスタンタンにおけるラグスポの原点ともいえるモデルが「ヒストリーク」コレクションに加わった。ブティック限定のモデルなので、興味のある方はお早めに。
ブレスレットと一体型の高級スポーツウォッチ
ヴァシュロン・コンスタンタンには、『オーヴァーシーズ』という大人気のラグジュアリーズポーツウォッチが存在するが、そのルーツは1977年に発表された『222』である。
70年代は、ブレスレットと一体型の高級スポーツウォッチが生まれた時代で、他ブランドでも名作と呼ばれるコレクションが登場している。それらは現代において、その存在感をさらに増しており、手に入れることすら困難なモデルまであるようだ。
そういう時代に満を時して登場したのが『ヒストリーク・222』。ブランドの名作モデルを現代風にアレンジした『ヒストリーク』コレクションの新作である。
オリジナルのデザインは、ヨルグ・イゼック。彼は、後に名だたるブランドの腕時計をデザインすることになる名匠だが、当時は弱冠24歳の若手デザイナー。ヴァシュロン・コンスタンタンは、その才能をいち早く見抜き、大抜擢したのである。
そして「クラシカルで洗練された世界観に合うように、エレガントでスポーティーでありながらバランスの取れた時計をデザインしたい」という想いから生み出されたのが『222』だったのだ。
モデル名の『222』は、77年がちょうど創業222年を迎えた年だったからである。この時代のモデルは“ジャンボ”の愛称で親しまれていた。ステンレススティール素材が大半だったが、イエローゴールド、ステンレススティールとイエローゴールドのコンビもラインナップされていた。
オリジナルデザインを踏襲
『ヒストリーク・222』は年間生産本数が限られたブティック限定モデルで、そのすべてがイエローゴールドケース&ブレスレットである。また、ブレスレットに六角形のコマが入るなど、オリジナルデザインの側面を踏襲しながら、いくつかの変更とアップデートが加えられている。
受け継いでいるのは、切り込みの入ったベゼルをフラットなケースの上に高く載せた機能的構造。ムーブメントをケースの表側から組み込む必要があるモノブロック構造なので、ねじ込み式のベゼルが必要だからだ。また、バトン針はスーパールミノバに変更されたが、これはトリチウム入り針のグリーンの発光に近いカラーを着色させるなど、オリジナルに寄せている。
さらに、ケースの5時位置にはヴァシュロン・コンスタンタンの象徴でもあるマルタ十字があしらわれているのも見逃せない。
大きな違いはムーブメントである。オリジナルは超薄型のCal.1120(ジャガー・ルクルト製Cal.920)を搭載しているが、新モデルではジュネーブシールを取得した自社製Cal.2455/2を採用している。
Cal.1120は2.45㎜という超薄型ムーブメントだったが、Cal. 2455/2は3.6㎜と1.15㎜厚みが増している。それでもオリジナル『222』のケース厚は7.5㎜、『ヒストリーク・222』のそれは7.95㎜となっている。ムーブメントの厚みが1.15㎜増したにも関わらず、ケース厚自体は0.45㎜しかアップしていない。ケース製造、仕上げの進化を、この数値が証明してくれている。
ただ、少し厚くなったとはいえ、新作のケースも7㎜台。ケースを横から見ると驚くほど薄く、とてもスポーツウォッチと思えないほど優美な姿を見せてくれている。またゴールドのローターが美しい自社製Cal.2455/2については、ケースバックのサファイアクリスタルガラスから見ることができる。
問い合わせ:ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755