文=福留亮司

今年のブレゲからは、とてもラグジュアリーなワールドタイムウォッチが登場した。セカンドタイムゾーンを瞬時に呼び出せるという機能を搭載したモデルは、ダイヤルに世界地図が描かれるなど、旅気分を盛り上げてくれる。

 

『マリーン オーラ・ムンディ5557』
自動巻き(Cal.77F1)、18Kホワイトゴールドケース、43.9㎜径、892万1000

『マリーン』コレクションの新作

 今年は初代ブレゲが製作したマリーン・クロノメーターのデザインを取り込み、1990年にデビューした『マリーン』コレクションから新作『マリーン オーラ・ムンディ5557』が発表された。このモデルは、インスタント・ジャンプ・タイムゾーンという複雑機構の表示システムを備えたもので、高い技術が盛り込まれた実にブレゲらしい腕時計だった。

 そのベースである『マリーン』だが、ルーツは1815年に創業者アブライアン-ルイ・ブレゲがマリン・クロノメーターの製造者として“フランス海軍省御用達時計師”に任命されたことに基づく。初代ブレゲの時代から『マリーン』の発表までかなりの年月が経っているが、時代背景に基づいたコレクションには、継承されてきたブランドの歴史が感じられる。

ケースサイドのコインエッジは、ブレゲ伝統の意匠だ

 『マリーン』は、これまでに自動巻き3針、クロノグラフ、アラームGMTを軸に、複雑時計、レディスモデル、ジュエリーウォッチなど、多くのモデルを展開してきた。それぞれに固有の機能、特徴はあるが、現行モデルのすべてに共通しているのは、搭載ムーブメントの心臓部である脱進機やヒゲゼンマイにシリコン素材が使用されているということだ。

 ブレゲは、他ブランドに先駆けて、2000年代から機械式時計の天敵である磁気の影響を受けないシリコン素材を投入している。パソコンやタブレット、電化製品など、強力な磁気に囲まれた現代のライフスタイルを配慮した取り組みで、先進的なところは、やはり伝統ということだろう。

 

3年の歳月をかけて開発

 そして『マリーン オーラ・ムンディ5557』だが、こちらの搭載ムーブメントは、3年の歳月をかけて開発し、4つの特許を取得したものだ。最大の特徴は、先に述べたインスタント・ジャンプ・タイムゾーン表示システムで、ようは瞬時に変更できるデュアルタイム表示である。

 操作はプッシュボタンとリューズでおこなわれる。まずプッシュボタンで最初の都市を表示し、リュウズで時刻と日付を設定する。あとは第2の都市を調整するだけ、といたってシンプル。すると機構が時刻と日付を計算し、知りたい都市の日時が表示される、というものだ。

 この旅する腕時計は、デザインでもイメージを膨らませてくれる。

 世界地図が描かれたダイヤルは、海を表現した深いブルーが印象的で、そこにはウエーブモチーフが彫られている。そして、それに重なるサファイアクリスタルに大陸、経線、緯線が描かれ、そのコントラストが美しい。4時位置にあるサン/ムーン表示では、太陽がローズゴールドで表現され、月はロジウムメッキで描かれている。その色彩の落差が、昼夜をよりわかりやすくしている。

 心臓部にシリコンを使用したムーブメントは、コート・ド・ジュネーブやギヨシェ彫り、スネイル模様の仕上げでエレガントに装飾されており、その一部はサファイアクリスタルのケースバックから見ることができる。

 

問い合わせ:ブレゲ ブティック銀座 TEL:03-6254-7211