経営者のリーダーシップや戦略だけが優れていても、会社は変わらない。企業カルチャー変革とセットになってこそ、初めて戦略は機能するからだ。だが、企業カルチャーは容易には変わらないこともまた事実だ。前職の日本電産では、M&A担当取締役として買収したグループ企業に出向き、数々の経営破綻寸前企業の黒字化を達成。現在は経営コンサルタントとして活躍する川勝宣昭氏が、豊富な事例を交えながら企業カルチャー変革の勘所を具体的に解説する。

※本コンテンツは、2022年7月26日(火)に開催されたJBpress/JDIR主催「第4回ファイナンスイノベーション」の特別講演「会社を変えたいが変わらない。どうすればいいのか? 日本電産出身経営コンサルタントが教える『企業変革の勘所』」の内容を採録したものです。

企業力を強化して勝ち残るために、「企業カルチャー変革」が必要な理由

 言うまでもないが、たとえグローバル企業であろうとも、国内市場をおろそかにすることはできない。DANTOTZ consulting代表取締役の川勝宣昭氏はまず、国内市場で勝ち残るための2つの選択肢を提示する。1つは「オーガニックグロース」、すなわち社内にレッドオーシャンを勝ち抜く強い企業力を持つこと。もう1つは「M&Aグロース」で、買収先企業を上回る企業力をもってシナジー効果を生むことだ。これらのいずれを実現するにしても、まずは「自社の企業力の強化」が必須になるのは言うまでもない。

 次に川勝氏は、企業力を構成する3つの要素を挙げる。1つ目は、経営者や経営管理者のリーダーシップおよび戦略だ。これを、「戦略経営力」と呼ぶ。2つ目は、経営にあたって採用する「経営手法」。そして3つ目が、企業カルチャーだ。

「高い企業力の実現のためには、この3つの要素がそろうことが重要ですが、強化すべき順序があります。私は、経営手法と企業カルチャーを合わせて『地べた経営力』と呼んでいますが、これを土台として固めた上で、戦略経営力を発揮していくべきだと考えています」

 企業カルチャーの重要性を、川勝氏は「氷山モデル」で説明する。海の上に見える部分には、戦略や事業計画、それを支える組織構造、人事制度、業務プロセスといったものがあり、これらはリストラクチャリング、リエンジニアリングなどによる企業変革の対象となる。しかし海の中には、見える部分の何倍も大きな企業カルチャーが沈んでおり、これが企業体質を決めるのだという。

「医療に例えると、見える部分の変革は外科療法、見えない部分の変革は体質改善療法といえるでしょう。体力がなければ、大きな手術には耐えられません。同様に企業も、大きな戦略転換の前に、企業カルチャーを改革して強い企業体質、つまり『地べた経営力』をつくっていく必要があるのです」

 たしかに戦略は重要だが、前提となる「地べた経営力」を軽視した戦略偏重経営では、肝心のその戦略が組織に根づかない。まずはしっかりした「地べた経営力」の土台をつくり、戦略にもとづく企業変革に備えなければならない。